©Expo 2025

EXPO2025 × DNP GOLD PARTNER

共に未来をつくる
EXPOストーリー

【第2話】メタストア

ミャクミャクが踊る!? メタストアで新しい買い物体験を創出

DNPは、2025大阪・関西万博公式ライセンス商品オフィシャルオンラインストア(公式ECストア)の運営を行っています。そのプロモーションの一環として、株式会社ハコスコとの共創で、“いつでもどこからでもミャクミャクに会えるバーチャルストア”「メタストア」を開設。3次元(3D)空間で軽やかに踊るミャクミャク、運勢とラッキーアイテムが表示されるメタストア内に設置した「ミャクミャクおみくじ」がSNSで話題を集め、公式ECストアの活性化や売上に貢献しています。このメタストア開設の経緯や設計の工夫、ユーザーの反響などについて、両社のプロジェクトマネージャーに聞きました。

メタストアとは

メタストアは、メタバース※1空間に実店舗のような仮想空間を構築し、商品販売や顧客とのコミュニケーションを可能にするサービスです。2次元(2D)では表現しきれない商品やブランドの魅力を3D空間の奥行きある表現で伝えることが可能です。メタストアを開発するのは、DNPのグループ会社である株式会社ハコスコ。同社はダンボール製のVR※2ゴーグルや360°映像の制作をはじめ、多様なVRサービスを提供しています。メタバースの構築・運用・基盤開発に加え、脳科学とテクノロジーを組み合わせたブレインテック事業の豊富な実績も有しています。

インターネット上に構築された3Dの仮想空間。

コンピュータで作り出された仮想的な3D空間に没入できる技術。

プロフィール

大日本印刷 ABセンター 事業開発ユニット 井手上 沙葉子(いでうえ さよこ)

公式ECストアのプロモーションおよびマーケティングを担当。メタストアの企画や2025大阪・関西万博マスターライセンスオフィス※3との調整など、全体を統括する。

ハコスコ 営業マーケティング部 堀田 健太(ほった けんた)

エンジニアとしての技術的知見を活かして、メタストアの企画・提案を行うほか、自社のエンジニアやデザイナーチームとの調整役も担う。

2025年日本国際博覧会協会のIP(知的財産)を活用し、ライセンシング(製造・販売)による商品・サービス等を通じて万博の魅力を発信する。

商品を選ぶ&サイトを巡る楽しさを提供したい

――まず、メタストア開設の経緯を聞かせてください。

井手上

検討を始めたのは、2023年10月頃です。万博公式ライセンス商品の販売店舗が全国各地に続々とオープンしているなか、公式ECストアによりたくさんのお客様に来ていただくには、何ができるのだろうと考えました。ECサイトは、場所や時間を問わずに買い物できる強みがある一方で、商品を手に取ったり、店舗内の雰囲気を楽しんだりといった実体験ができない点が弱みです。そこで、公式ECストアの中に、実際の店舗で買い物するような体験ができるバーチャル空間をつくってはどうか?というアイデアが生まれ、既にDNPのXR(Extended Reality)※4部門との協業実績もあったハコスコと実現することになりました。

VRやAR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)など、リアルとバーチャルを掛け合わせて新たな体験をつくり出す先端技術の総称。

――開発・制作にあたって意識したことはありますか?

堀田

大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に沿って、“未来の新しいお買い物体験”という視点で制作することです。例えば、メタストアに入った瞬間に「万博のストアに来た!」と感じていただけるように、中央にミャクミャクを配置し、赤と青とグレーの万博カラーをデザインに取り入れました。また、このメタストアでは、奥行きのある3D空間を自由に行き来できる点が、通常の2Dサイト(上下スクロールが基本)とは大きく異なります。その特長を既存のECサイトのWebページと連動させて埋め込むことで、これまでメタバースや3D空間に馴染みがない方でも、通常のWebページを見る感覚で楽しめるようにしています。

――公式ECストアとメタストアとでは、ユーザー体験や商品構成は異なりますよね。どのように棲み分けされていますか?

堀田

公式ECストアは商品カテゴリーを整理し、目的の売り場までスムーズに移動できる導線を設計するなど、ユーザーが2,000点ほどの商品の中から欲しい商品にたどり着きやすくなる工夫がされていると思います。一方でメタストアでは、商品を選ぶ楽しさ・巡る楽しさを実感してもらうことを目的に、思わず見て回りたくなるようなワクワク感の醸成に力を入れました。

井手上

メタストアの商品ラインナップは、公式ECストアの人気商品を中心に、“日常使い”ができるアパレルや、パッと目を引く鮮やかな日用品・雑貨など、バラエティーに富んだものを選んでいます。

キャラクターの魅力を訴求し、ミャクミャクの人気向上にも貢献

――踊るミャクミャクが可愛くて、何度も訪れたくなりますね。ミャクミャクを踊らせたのはメタストアが最初ですが、そのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

井手上

ミャクミャクは今では広く人気を博していますが、メタストアの企画当初は、まだ人気が限定的という印象でした。そのため、「ミャクミャクの可愛さをもっと広めたい!」という想いが強くありました。 “いつでもどこからでもミャクミャクに会える”、そんな空間をつくることで、ミャクミャクをより身近に感じていただけたらいいなと――。そういった“ファンエンゲージメント”の創出も、メタストアの目的の一つでした。

堀田

その意向を受けてデザイナーたちと考えたのが、3Dデータを活用した「ポップに踊るミャクミャク」でした。ミャクミャクというキャラクターの特性を損なわないよう、細かい動きに至るまで、細心に調整しました。

――メタストアの「ミャクミャクおみくじ」も楽しくて、訪れると必ず引いてしまいます。

運勢と一緒にラッキーアイテムも教えてくれる「ミャクミャクおみくじ」
堀田

メタストアの空間を見て回ったり商品を購入したりというだけではなく、プラスアルファのエッセンスで、ここを訪れた人の満足度を上げ、何度も来てもらえたらいいな、と。そうして生まれたのが、「ミャクミャクおみくじ」です。ラッキーアイテムがランダムで表示されるので、来店ユーザーが思いがけない商品と出合う機会の創出にもつながっています。

――メタストアは2024年6月のオープン後、すぐにSNSで話題になりましたね。

井手上

踊るミャクミャクへの反響が大きく、SNS上では「ミャクミャクってこんなにキレキレのダンスをするんだ!」「踊る姿が可愛い」など、ポジティブなコメントをたくさんいただきました。またそれがSNSのユーザー間で拡散されたので、ミャクミャクの可愛さ・ポップさの訴求は大成功だったと思っています。さらには、今回メタストアを楽しんでいただく対象は大人の方を想定していたのですが、お父さんやお母さんのスマートフォンを使って楽しんでくれたお子さまも多かったようです。これは想定外でしたが、うれしく感じました。

ブラウザからアクセスできる手軽さがSNSでの拡散の一助に

――メタストアは、特別なアプリやソフトをダウンロードする必要がない点も便利ですね。

堀田

はい。パソコンでもスマートフォンでも、端末を問わずにブラウザから手軽にアクセスできる設計にしています。

井手上

そのことも、SNSからのアクセスが伸びた要因だと推察しています。メタストアのURLをクリックするだけで、ブラウザで見ることができるので。おかげで、メタストアに来店されるユーザー数は公開以降順調に増え続け、今では、セッション数がランキングの上位になる人気コンテンツになりました。

――開発で苦労したのは、どういうところですか?

堀田

ハコスコにとって、アニメーション付きの3Dモデルを実装したのはこのメタストアが初のケースでした。3Dモデルを実装すると、どうしてもデータ容量が大きくなって表示に時間がかかってしまい、ユーザーの離脱を招く要因にもなりかねません。そこで、データ容量を軽くしつつ、いかにクオリティを落とさずきれいに楽しく見せるか、ということに苦心しました。

――最後に、今回得られた知見を活かして、今後挑戦したいことをお聞かせください。

堀田

メタストアの反響の高さから、「AR※5やバーチャル空間で自分の好きなキャラクターやマスコットに会える」というコンセプトは需要が高いことを実感しました。ARやバーチャル空間を活用した商品の開発など、広くメタバースの魅力に触れられる機会の創出に挑戦していきたいです。

井手上

これまでのプロモーションは、Web広告や印刷物を用いることが多かったのですが、メタバースという選択肢が増え、プロモーションの幅が広がりました。この実績を水平展開し、現在開発中のさまざまなビジネスのプロモーションに導入したいですね。

現実世界にデジタル情報を重ねて表示する技術。

プロモーションを盛り上げる「ミャクミャクARステッカー」

“いつでもどこからでもミャクミャクに会える”というメタストアのコンセプトが好評だったことを受けて、「商品購入者に《ミャクミャクARステッカー》をプレゼント」という期間限定キャンペーンを2024年11月に実施しました。
ステッカーに印刷してある二次元コードと絵柄を読み込むと、ARミャクミャクが浮かび上がる仕掛けです。基本デザインは2種で、それぞれ5パターンのミャクミャクがランダムに登場! 公式SNSで実際の使用シーンを動画で発信したところ、「可愛い!」「ほしい!」といった声が多数寄せられ、公式ECストアの売上拡大につながりました。