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共に未来をつくる
EXPOストーリー

【第4話】未来エネルギー共創プロジェクト

万博を契機に、エネルギー分野から“未来のあたりまえ”をつくり出す

DNPは、「P&I(印刷と情報:Printing &Information)」の強みを掛け合わせ、多くのパートナーと共創し、社会課題の解決などにつながる新しい価値の創出に取り組んでいます。エネルギー領域への挑戦もその一つ。大阪・関西万博の「フューチャーライフエクスペリエンス※1(Future Life Experience :以下、FLE)」への出展では、大学やスタートアップ企業とともに、環境・エネルギー領域の課題解決によって実現できる未来の暮らしを提案しています。近畿経済産業局、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とのこの共創が、どのように誕生し、どのようなメリットがあり、今後どのように拡げていくのか、各担当者に聞きました。

「フューチャーライフヴィレッジ(FLV)」にある“人が主役”のパビリオン。さまざまな参加者が「未来の暮らし」「未来への行動」をコンセプトとする多種多様な「問い」と「提案」を持ち寄ることで、参加者同士や他の来場者との対話が生まれ、未来社会の姿をみんなで考え、共創(co-create)を実現していく。

プロフィール

経済産業省 近畿経済産業局 津田 哲史(つだ さとし)

経済産業省の地方支分部局である近畿経済産業局にて、企業連携を促進するイベントを企画。企業と研究機関等をつなぐ役割を担う。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 福田 有里(ふくだ ゆり)

エネルギーや地球環境の課題の解決、日本の産業技術力強化を目的とする政府機関「NEDO」にて、委託事業や補助金等によって技術開発を支援。DNPと研究機関との橋渡し役となる。

大日本印刷株式会社​ マーケティング本部 居内 俊祐(いうち しゅんすけ)

社内の大阪・関西万博推進プロジェクトチーム事業開発チームの責任者としてFLEの展示を担当。展示検討の過程で共創パートナーと連携し、新規事業の立案を行う。

日本のエネルギーを取り巻く環境変化

日本のエネルギー自給率は約15%と低く、発電の7割程度は化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)に依存しています※2。2020年に日本は、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目指すと宣言しました。これを踏まえ、経済産業省を中心に関係省庁が連携し、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」として、産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される14の重要分野について実行計画が策定されました。NEDOに「グリーンイノベーション基金」を造成し、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援しています。

経済産業省 資源エネルギー庁『令和6年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2025)』エネルギー動向(2025年6月版)

DNPがなぜ、エネルギー領域に挑むのか

――DNPがエネルギー領域に挑戦することになった経緯を教えてください。

居内

今回FLEに出展するにあたり、数あるテーマの中からエネルギー領域を選んだ背景には、DNPが掲げる「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントがあります。エネルギー関連の領域のうち、現時点で事業展開までは至っていないエネルギー自給率や自然災害時の電力供給といったテーマに対して、DNP独自のP&Iの強みに社外の技術を掛け合わせれば新しい価値を創造できる、それが“未来のあたりまえ”につながると考えたのです。
大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にも合致しますし、万博という特別な場を新たな価値創出の起点にしたいとの思いもありました。

――今回の三者の連携に至った経緯は?

居内

エネルギー領域をテーマとしてFLEに出展することは決まったものの、共創パートナーをどう見つけたらよいのか、実は模索していました。そこでまず、近畿経済産業局に相談したんです。

津田

近畿経済産業局は、「関西・共創の森※3」という国の支援機関のネットワークを創設しており、その活動の一環として、企業・研究機関同士の共創を生む“出会いの場”として「関西・共創の森 DAYS※4」というイベントも行っています。このイベントは、過去に2回、DNPの共創施設「P&Iラボ・大阪」でも開催し、DNPとは信頼関係を築けていました。そういった背景もあり、「エネルギー領域で共創したい」というお声掛けをいただいた際にも、「関西・共創の森」のネットワークを活用して協力できると考え、NEDOに声を掛けさせていただきました。

福田

NEDOは、エネルギーや産業技術を研究している大学の研究者や企業、スタートアップ企業を資金援助という形で支援しています。ただ、残念ながら、せっかくの良い技術でありながら、社会実装をイメージしにくくて、研究段階で埋もれてしまうケースも多く見てきました。
今回のように、万博という特別な場で世界に技術を発信できるのはとても貴重な機会になります。「関西・共創の森 DAYS」で「P&Iラボ・大阪」を見学した際、DNPの強みや“より良い未来”の実現を目指す想いをしっかり感じていたこともあり、ぜひ連携したいと、我々が支援する団体を対象に募集を行いました。

居内

NEDOのネットワークの活用によって、30を超える企業・団体から応募をいただきました。FLEではその中から9つの企業・団体と共創することになりましたが、その他の団体の方々とも良い関係を構築し、事業化の道を探っていきたいと考えています。

津田

“万博”という言葉は、極めて特別で有効なキーワードですよね。「万博を契機に、何かに一緒に取り組みませんか?」と声を掛けやすく、共創への第一歩を踏み出しやすくなります。受発注や主従というだけの関係ではなく、“パートナーとしての共創”が実現できると感じています。

関西にある国の支援機関の施策やネットワークを連動させて、社会課題解決に向けたイノベーション創出を支援する組織。企業や大学・研究機関等の技術シーズ・ニーズの発掘から、研究開発、実用化・事業化までをワンストップで支援している。

社会課題の解決を目指す企業や大学・研究機関等の技術シーズ・ニーズの発表や交流を通して、協業やイノベーション創出の機会を提供する、プレ“未来社会の実験場”。

――FLEの展示では、私たちの無意識な行動や思いもよらないものからエネルギーを生み出せることを知り、驚きとともに未来への可能性を感じました。

居内

大学や研究機関、スタートアップ企業との共創によって、決して夢物語ではない、「未来のありたい姿」を描くことができました。

福田

今回、DNPのFLE共創パートナー募集に当たっては、「未踏チャレンジ※5」や「若サポ※6」など国の支援事業に参加している、既存の枠にとらわれず新しい可能性を追求する若手研究者に声を掛けました。エントリーいただいたのは、 共創に前向きで、ユニークな技術や発想を持つ将来が楽しみな先生方です。

居内

はい。おかげで想像もしていなかった数々のアイデアが集まり、非常に質の高い展示につながったと実感しています。

NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ

官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)

DNPのFLE展示内容

「DNP自産自消型自然エネルギー社会※7」をコンセプトに、環境・エネルギー領域の課題解決によって実現する2050年の自然エネルギー社会を表現。生物・光・周辺環境から生まれる微細なエネルギーを電力に変換し、それを蓄電・送電・制御することで、エネルギーが暮らしの中で循環する“持続可能な未来社会”を提案します。

DNPが描く、個人・自宅・企業といった「地産地消」よりも小さな範囲でエネルギーが循環する社会。

三者連携のシナジー効果と今後への期待

――三者連携のシナジー効果をどういうところに感じていますか?

居内

DNPは常にチャレンジャーですが、エネルギー領域では特にそうです。DNPだけでは今回の素晴らしい共創パートナーと出会うことはできなかったと思いますし、本当に感謝しています。おかげで、多様な発想や強みを掛け合わせることで、豊かな生活に必要なエネルギーを“自産自消”して、自然と共生する未来社会を描くことができました。この展示が万博を盛り上げるとともに、展示した取り組みを共創パートナーとともに実際に推し進めて新たなビジネスモデルを生み出し、関西から世界まで広がる経済を活性化させていきたいと考えています。それを実現することで、近畿経済産業局やNEDOの支援にも応えたいですね。

福田

近畿経済産業局の“つなぐ力”によって、DNPや共創パートナーとの出会いが生まれたことが何よりの成果ですよね。イノベーションを生む“種”となる基礎研究を、DNPという“社会実装の担い手”とマッチングできたことは、日本の未来にとって有意義だったと自負しています。

津田

そうですね。エネルギー分野におけるNEDOの高く広い見識と人脈が活かされ、さらに三者の連携によって、万博だけで終わらない長いスパンでのプロジェクトメイクができる関係性を構築できました。シンプルに言うと、一者では実現しなかった今回のプロジェクトを、万博という場で三者が協力し合って実現できたことが、文字どおり「シナジー効果」だったのではないでしょうか。

――今回の連携を経て、今後への期待を聞かせてください。

福田

今回の出会いを一過性のものにせず、NEDOのプロジェクト等を活用しながら、社会実装を目指していただくことを期待しています。

津田

万博はある意味“お祭り”で、大人が真剣に遊べる場でもあります。真剣に遊ぶからこそ、新しい出会いが生まれ、そこからイノベーションが生まれるのでしょう。この万博で発表されているさまざまな先端・先進技術が「あたりまえ」になる社会が実現することを願っています。
また、今回のDNPのように共創活動に取り組む企業は関西でも増えてきているので、「関西・共創の森」の活動と連携しながら、そうした共創意欲の高い企業同士、大企業だけでなく、スタートアップ企業や中堅・中小企業も含めて、さまざまな連携が進むことを期待したいですね。

居内

まずは世界中の方々に、「DNPが万博でエネルギー領域に挑戦している」という強い気持ちを受け取っていただきたいですね。そして、今回の挑戦だけで終わらせるのではなく、共創パートナーとともに次のフェーズに進み、DNPが「より良い未来」としてめざす「4つの社会」の一つ「経済成長と地球環境が両立する社会」を実現していきたいです。