公益社団法人 2025年日本国際博覧会大阪パビリオン
清水 克昭(しみず よしあき)理事
大阪府・大阪市万博推進局の理事でもあり、大阪府・大阪市の万博推進業務の総合的な調整や、大阪ヘルスケアパビリオンの推進・管理を担う。
©Expo 2025











【第5話】官民一体でパビリオンを運営

「REBORN」をテーマに、未来のヘルスケアや都市生活を体感できる大阪ヘルスケアパビリオン。豊富な展示と、来場者一人ひとりに合わせた体験ができる点で人気を集めるとともに、官民が共同で出展するという取り組みも注目されています。このパビリオンを推進・運営するのは公益社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン(以下:大阪パビリオン)。DNPはこの取り組みに協賛し、社員1名が職員として出向しています。今回は、大阪パビリオンの理事と運営課長、そしてDNPから出向している社員の3名に、組織の枠を超えた協働について聞きました。
プロフィール

公益社団法人 2025年日本国際博覧会大阪パビリオン
清水 克昭(しみず よしあき)理事
大阪府・大阪市万博推進局の理事でもあり、大阪府・大阪市の万博推進業務の総合的な調整や、大阪ヘルスケアパビリオンの推進・管理を担う。

公益社団法人 2025年日本国際博覧会大阪パビリオン
運営・接遇グループ 與十田 智彦(よそだ ともひこ)
「パビリオンの円滑かつ安全な運営を進める」をミッションに運営全般を統括。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会や出展・出店企業等との運営改善に向けた調整も行う。岡﨑の上長。

公益社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオンにDNPから出向中
岡﨑 安有子(おかざき あゆこ)
DNP入社以来、包装材・パッケージの営業として提案や企画を行う。2022年10月に大阪パビリオンに出向。現在は課長代理に昇進し、運営業務全般を担当。
「いのち輝く未来社会」をデザインする大阪ヘルスケアパビリオン

「REBORN」をテーマとしたこのパビリオンでは、大阪府・大阪市と100を超える企業や大学などが連携し、「いのち輝く未来社会」を体感できる場を創出。iPS細胞、ミライ人間洗濯機などの豊富な展示を通して、来場者一人ひとりに命や健康について考えるきっかけを提供しています。DNPは、パビリオンの企画・運営全般に携わるとともに、パビリオンに併設されたイベント会場で、5月に「Come Together!― 未来はいろいろな輝きに満ちている DNPのテクノロジー ―」も開催。メタバースでの伏見稲荷大社千本鳥居の体験や微生物電池システムの展示など、多彩なプログラムを実施しました。
――DNPから出向が決まった際の正直な気持ちを聞かせてください。

――大阪パビリオン側としては、DNPとの共創にどんな期待を持っていましたか。
DNPには万博や展示イベントのノウハウがあり、これまでパビリオンについてのアドバイスももらっていましたから、出向で社員が来ていただけることをありがたく思いました。
大阪パビリオンの運営担当には大阪府や大阪市といった行政出身者が多い中、行政とは異なる感覚や視点を持った方が加わることで、より良いものができあがるという期待がありました。また、行政からの出向者に対しても良い刺激を与えてくれると考えていました。
――岡﨑さんは現在、パビリオンの運営全般に携わっています。出向から開幕までの2年間は、どのような業務を担当していたのでしょう?
本パビリオンは多くの企業・団体の協賛によって運営されていますので、最初は主に企業への協賛依頼とその調整を行っていました。それぞれの協賛金額もかなりの規模になりますから、いかに納得して協賛してもらうかに苦慮しました。参画することでどんなメリットがあるのかを明確に提示し、各段階で承認を得ながら、丁寧に進めていきました。その他、パビリオンの開館時間などの運営内容、ステージでのイベントの方向性などを決めたり、入札の仕様書を作成したりといった業務も行っていました。
――大阪ヘルスケアパビリオンは、100を超える企業や大学、自治体が連携しています。全体をまとめるのは大変だったのではないでしょうか?


まさにそこが最も苦労した点です。組織や立場の異なるメンバーが集まる中で、全体の方向性を一つにまとめていくことが非常に難しかったのですが、岡﨑さんがしっかりと調整役を担ってくれました。運営していると日々新しいことが起こるので、スピーディにどんどん対応していく必要があります。その点、岡﨑さんは何が起こっても冷静に素早く対応してくれるので、とても頼もしいと感じていました。
岡﨑さんはコミュニケーション能力も非常に高いですよね。協賛企業や事業会社など対外的にもそうですが、運営課のチームワークが良いのも、岡﨑さんがチーム内のコミュニケーションの中心的な役割を担い、チームをまとめてくれているからです。岡﨑さんが盛り上げてくれるおかげで、職員のモチベーションも高まっていると感じています。
ありがとうございます。運営課の団結力を高めると言うと大げさですが、官民を超えたチームをまとめる雰囲気づくりは心掛けました。また、開幕前のテストランで初めて来館者を迎えたときは、そうした準備が形になった実感があって、感動するとともにやりがいも感じました。
イベント企画に際しても、必要な機材や考えられる企画内容などを岡﨑さんがすぐに調べて、コスト面も含めた最適解を提示してくれたのはとても助かりました。アイデアも斬新ですし、行政側のメンバーだけでは気づきにくい部分にも的確にアプローチしてくれて、全体をよく見て考えているなと感心しました。
DNPには多様な部署があり、信頼できる社外のパートナーも多くいます。これら社内外のリソースを活用して、この内容でステージをつくるためのコストはどれくらいか、どんな設備が必要かといった情報を収集し、提案やアドバイスを行うことができました。
――岡﨑さんは、DNP社員としての経験や視点を活かしているようですが。
はい。DNPではパッケージ関係を扱うLifeデザイン事業部に所属し、ユーザー視点や価値提供の考え方を重視して業務に当たっていました。それがこの現場でも役立っていると感じています。例えば、来館者にとってわかりやすい動線や案内の見せ方など、日頃の業務を通して身についていたのかなと思います。また、多様な関係者との調整やプロジェクト管理も、DNPで多くのスタッフとともに業務に携わってきた経験があったからこそ、スムーズに進められていると実感しています。
――行政ならではの仕事の進め方や文化に触れて、印象的だったことはありますか?

行政では特に、意思決定にあたって必ずエビデンスや明確な理由付けが求められます。DNPの営業としては、スピードを重視し、その都度柔軟に対応することが多かったのですが、ここではまず情報を丁寧に整理し、筋道を立ててから進める姿勢が重視されていると感じました。こうしたやり方は、情報共有やプロセス管理、役割・責任を明確にするのに有効だということを学びました。ただ、意思決定にいくつもの段階があり、どうしても時間がかかる面はあるかなと思いました。
――そうした違いの中で協働を進めるために心掛けたことは?
協賛企業・団体から早急な回答を求められる場合などは、事務局長に直接相談して迅速に決めていきました。行政では立場や役割を尊重されているからか、立場の異なる方同士の議論はあまり見られないように感じましたが、私は、疑問に思うことや納得できないことは遠慮せずに意見として伝え続けました。そうした姿勢が成果や信頼につながっていったように思います。立場や役割の異なるさまざまな関係者が関わる中で、自分から一歩踏み出して対話を重ね、調整しながら動かしていくことの大切さを実感しました。

――今回の協働を振り返り、その成果と今後への期待を聞かせてください。
別々のキャリアを積んできた者同士が、同じ目的に向かって仕事をすることで、新しい視点に触れたり、異なる仕事のやり方を学んだりできると肌で感じました。今回各人が得たもの、人脈はもちろん経験や知見も、それぞれの出向元に戻った際に必ず活かされると確信しています。DNPには今後もぜひ、大阪府・大阪市を一緒に盛り上げてもらいたいですね。
DNPには岡﨑さんというすばらしい人材を送り出していただき、本当に感謝しています。万博は期間の限られたイベントですが、そのレガシーとして、大阪ヘルスケアパビリオンのような官民一体となった新しい取り組みは大きな意味を持ちます。これからは行政だけで何かをやっていくという時代ではありません。今回の協働で、民間企業に信頼できるパートナーができたことを心強く思っています。
――岡﨑さんはDNPに戻った後、この出向で得た経験をどのように活かしますか?
DNPで営業職として働いていた頃とは異なり、ここでは来館者の体験や反応を現場で直接感じ取ることができました。エンドユーザーの声に直に触れることで、営業としての視座が高まったと感じています。今後は、より高い視座、より広い視野でプロジェクト全体を捉え、関係者の力を引き出しながら価値を創出できる人材として成長していきたいと思います。万博という大規模なイベントに関わった経験や、そこで得た知見・ネットワークも、今後の提案活動や社内での情報共有・チームづくりに活かしていきます。
これまでとは違った業界・環境に身を置くことになるので、不安はありましたが、万博という国際的イベントに直接関われることに大きな期待がありました。新しい経験を通して自分の視野を広げるチャンスでもあり、ワクワクした気持ちもありました。