柏市様、柏の葉アーバンデザインセンター様、国立研究開発法人産業技術総合研究所様

ナッジを使った「脱炭素×まちづくり」のアイデアを住民の手でトライアル実施

「脱炭素のまちづくり」をテーマに、柏の葉キャンパス駅周辺の住民参加型ワークショップ第二弾を実施。行動デザインのDNP独自メソッドを適用したワークショップを経て、2024年11月3日(日)に開催された柏の葉マルシェコロールの中で脱炭素につながるアイデア4件のトライアルが行われました。 (2025年9月時点の情報です)

取組みの背景

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下 産総研)様も参画されている柏の葉アーバンデザインセンター及びUDCKタウンマネジメント(以下 UDCK)様が、柏の葉キャンパスで取り組む市民共創の場「みんなのまちづくりスタジオ」。
市民自らが脱炭素まちづくりのアイデアを考える「みんスタDeco活編」の第2弾が2024年9月からスタートしました。
2023年に開催された第1弾ではアイデアを考え発表することがゴールでしたが、第2弾ではそれを一歩進め、イベントの場でアイデアを実行し検証を行うことをゴールとしました。行動デザインの考え方を取り入れたワークショップをDNPのサービスデザイン・ラボ(SDL)が提供し、市民が参加したくなる新たなイベントアイデアの実証に挑戦しました。

ワークショップのテーマは「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)。全5回のプログラムを通じて、2023年の第1弾で設定した4つのテーマ(環境保全、3R、サステナブルファッション、食品ロス)は継続しつつ、各テーマに紐づくアイデアを、より参加したくなる内容へと見直しました。
そのアイデアは、街の住民が主催するイベント「柏の葉マルシェコロール」の中で実施・検証され、環境をテーマとした柏市・UDCK主催の啓発イベント「かしわ環境フェスタ in 柏の葉」にて成果発表を行いました。
このうち第2回のワークショップをSDLが担当し、第4回のトライアルを見据え、行動デザインを活用して「どうすれば脱炭素につながる行動を促すイベントに参加したくなるか」を市民共創型で考えました。
行動デザインは、“やらなければいけないと思いながら、なかなかできないこと”について、製品やサービス、環境のデザインを通じて、生活者の行動変容を促す手法です。DNPは慶應義塾大学と共同で、誰もが簡単に行動デザインの考え方を取り入れてアイデアを発想できるよう、プロセスの体系化とツールを開発。今回のワークショップでは、このプロセスと、行動を後押しする要素(ナッジ)が書かれた「DNPナッジカード®」を活用してアイデアを発想しました。

ナッジを使った行動デザイン ワークショップ内容

SDLが担当した第2回のワークショップのゴールは「脱炭素まちづくりのアイデアを、より参加したくなるイベントアイデアにブラッシュアップする」ことです。第1回後に、各チームが作成した「脱炭素につながるイベントアイデア」を伝えるチラシをインプットとして、
(1)イベントに参加してほしいペルソナの設定
(2)ターゲットとなる生活者がその行動をしない理由(行動障壁)の分析
(3)ナッジの考え方を活かした、行動を起こしたくなる施策アイデアの発想
の3ステップで進めました。

(1) イベントに参加してほしいペルソナの設定
トライアルを実施する柏の葉マルシェコロールを想定して、どんな人に自分たちのイベントに参加してほしいのか、そのペルソナ像を具体化しました。

(2) ターゲットとなる生活者がその行動をしない理由(行動障壁)の分析
各チームが(1)で設定したペルソナに近い人をワークショップ参加者の中から選定。その人にイベントを紹介するチラシを見せながら、なぜそのイベントに参加したいと思わないのか、障壁を洗い出しました。

(3) ナッジの考え方を活かした、行動を起こしたくなる施策のアイデアの発想
DNPナッジカードを使い、障壁を突破するアイデアを発想。参加したくなる理由が3つ含まれるようイベントのチラシをブラッシュアップしました。

ナッジカードを使ったワークショップの様子

「柏の葉マルシェコロール」でのトライアル

次の第3回では各チームのアイデアに関わるステークホルダー(例えば、調整池周辺の環境保全アイデアには調整池の管理担当者、3Rのアイデアには市の廃棄物政策課の職員)を交えてディスカッションが行われました。ステークホルダーからのアドバイスや、再度ナッジを活用したアイデアブラッシュアップを経て、第4回ではアイデアのトライアル実施が行われました。
街の住民による実行委員会主催の「柏の葉マルシェコロール」の中で、各チームがブースを出展。実際に街の人にアイデアを体験してもらい、アンケートやインタビューを通してアイデアの価値検証を行いました。

マルシェコロールでのトライアルの様子

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「かしわ環境フェスタin柏の葉」での成果発表

最終プログラムである「かしわ環境フェスタ in 柏の葉」内で実施された「柏の葉脱炭素フォーラム」にて、ワークショップを通じて生み出された4つのアイデアとそのトライアル結果について、参加した市民が発表しました。

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(アイデアの例:環境保全チーム)

第1弾終了時点では、子育て層をターゲットにしたごみ拾い促進のアイデア。
第2弾に入ってから、より直接的に環境保全によって恩恵を受けるターゲットとして調整池のランナーを設定。
ランナーが参加したくなる調整池の草刈りイベントを考え、柏の葉マルシェコロールの中でイベントを実施。子どもを連れて参加しやすくするため、調整池に住む動植物のカードも作成、プロトタイプを配布しました。

環境保全チームのアイデアの変遷

今後の展開

今回、柏の葉に暮らす住民自身が「脱炭素を促すイベント」を、ワークショップを通じて具体化し、柏の葉の街でプロトタイピングすることをめざしました。実際にトライアルをすることで、ワークショップ参加者以外の人にもこの活動を知ってもらい、フィードバックしてもらうことができました。また、環境保全に関わる職員やリサイクルに関わる施設など、UDCK様や柏市様が持つリソースや人脈とつながることで、より実現性の高いアイデアになりました。そこに行動デザインのノウハウを組み合わせることで、参加者の視点でもメリットのあるアイデアにブラッシュアップすることができました。
環境保全チームで出た調整池の動植物のカードアイデアは「生態系ウォーズ 守れぼくらの生き物たち 柏の葉編」として市民の手で商品化。UDCK様や柏市様も協力するイベントの中で参加者に配布されています。
今後も柏の葉の既存の活動と紐づけていくことで、社会実装をめざした活動につなげていく予定です。

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DNPではサービスデザイン・ラボという組織を編成し、人起点で商品やサービスの新たな体験価値を創造し、
それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。

※「サービスデザイン・ラボ」「DNPナッジカード」は、DNP大日本印刷の登録商標です。

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