内装担当者・設計者が知っておくべき!
2024年マンション内装トレンドとDNP 5 Stylesの活用
マンションの内装を決定する方にとって、最新トレンドのキャッチアップは欠かせません。また、実際にマンションを選ぶユーザーの視点やニーズも押さえたいポイントです。
このコラムでは、国内外におけるマンション内装のトレンドを反映させた空間のあり方や、その空間に対するアンケート調査の結果から見えたユーザーニーズについて解説します。
後編の記事では内装建具や床材に関するアンケートや、内装選びのポイントについて解説しています。こちらも参考にしてみてください。
INDEX
マンション内装のトレンドの変遷と内装担当者・設計者の役割
マンション内装のトレンドは、建材の進化に伴って変遷してきました。
例えば、昔はクッションフロアやフローリングの防音性能が低かったため、防音対策として床材の上に敷く防音用のカーペットが多く採用されていました。現在では、防音性の高い防音フローリングが多数ラインナップされているため、フローリングを採用するのが主流です。さまざまなテイストに合うよう、色・柄も豊富にそろっています。
壁材は、今も昔もクロスを貼るのが主流です。製品の種類は時代とともに豊かになっており、クロスの色や質感でより個性を出しやすくなりました。また、デザインだけでなく、クロスの性能も進化しており、調湿機能や消臭機能を併せ持った製品も登場しています。さらに近年では、タイルや木質系の壁材、水や油、汚れに強いパネル状の壁材など、さまざまな素材が使われるようになり、設計の選択肢は増加しているといえるでしょう。
内装のデザインを考えて決定する担当者は、このようなトレンドの変遷を敏感にキャッチしながら、利用者のニーズにマッチする内装を提案する重要な役割を担っています。
近年のトレンドと設計ニーズの変化
近年のマンション内装のトレンドは、「普遍性」と「快適性」の2つです。
「普遍性」とは、特定のスタイルに縛られることなく、さまざまなライフスタイルの変化に対応できることを指します。地球環境問題に対する社会的な関心が高まるにつれて、建築の分野でも、長期間使い続けられる建材を用いた暮らしが求められるようになりました。
「快適性」については、内装の機能面だけでなくデザイン面からも、家のなかの居心地を向上させることが求められています。この背景としては、2020年に始まったコロナ禍による、自宅で過ごす時間の大幅な増加が挙げられるでしょう。人気が高まっているデザイン例には、明るめのグレーやベージュのコーディネートがあります。ライトグレージュともいわれるこの色合いは、ナチュラル・モダン・スタイリッシュなど、さまざまなテイストと相性が良く、空間を広く感じさせる効果があります。
今後、内装を決定する担当者には、住む人のライフスタイルの移り変わりに寄り添い、どの時代でも快適に過ごせる普遍的な内装をめざして、色や柄、素材を選定することが求められるでしょう。
DNP 5 Styles に関する調査について
ここまで見てきたように、内装のトレンドは、時代の移ろいと人々のライフスタイルの変化、技術やデザインの進化とともに変化していきます。DNPの生活空間事業部では、それらの変化をキャッチし、最新トレンドの内装をご提案できるよう、2016年から建具用・床用シートの新製品
を活かしたインテリア空間「DNP 5 Styles」を発表しています。
今回、「マンション内装におけるドア・床のコーディネートに関するアンケート」と題して、DNP 5 Styles が提案する5つのライフスタイルに関連した、マンションの内装にまつわる意識調査を実施しました。調査結果を紹介しながら、内装のトレンドやニーズについて考察していきます。
DNP 5 Stylesについて
DNP 5 Stylesは、内装に関する国内外のトレンド情報を分析し、その結果を反映させたペルソナを設定した上で、ペルソナにとっての理想的な住まいの空間を、「Calm」「Moments」「Flow」「Tasty」「Advanced」という5つのスタイルに分けています。これらの5つのスタイルは、現実的な空間よりもワンステップ上の夢のある空間として描くことで、実際の暮らしの参考としていただくことをめざしたものです。
DNP 5 Stylesで提案する5つのスタイルは、それぞれ次のような意味を持ちます。
Calm
「Calm」のイメージ |
爽やかな風とやさしい光が織りなす清閑なひととき。心身のやすらぎを感じる洗練された装いは、住む人を都会の喧噪から解放し、新しい感性を芽生えさせます。
2024年のCalmのテーマは、Serene Resortです。都会的な要素もありながら、澄んだ空気に包まれたリゾート地を連想させるような空間にしました。
Moments
「Moments」のイメージ |
見極められた美に宿る端正な佇まいと、日本の伝統美にモダンスタイルの息吹を感じる審美的デザイン。2024年のMomentsは、Graceful Wellnessがテーマです。身体だけではなく心の健康も促すような、清潔感のある静穏な空間をつくりました。
Flow
「Flow」のイメージ |
2024年のFlowは、Delightful Bloomをテーマにしています。家族が賑やかに暮らし、心から安心してくつろぎの時間を過ごせるような空間をイメージしました。自然と調和する素材やカラーの重なりが、アクティブなファミリーライフをひきたてます。
Tasty
「Tasty」のイメージ |
優美な素材が奏でる至福の時間。人々を魅了する、きらびやかで凛としたムード。上質で味わい深い空間コーディネートは、気品のある豊潤な時間を演出します。
2024年のTastyのテーマは、Timeless Longingです。時代やトレンドにとらわれることのない、誰もが憧れを抱くようなラグジュアリースタイルをイメージしました。
Advanced
「Advanced」のイメージ |
ライフスタイルを映し出すエディトリアルインテリア。文化や価値観の枠を超え、自分だけのライフスタイルを紡ぎます。2024年のAdvancedは、Inspiring Hideoutをテーマにしています。趣味や仕事に没頭でき、新たな感性を生み出す隠れ家をイメージしました。
本サイトではこれまでにも、そのときどきのトレンドを反映させたDNP 5 Stylesを発表してきました。過去のコラムと、DNP 5 Stylesに込めた思い、2024年の新柄ラインナップについては、以下よりご覧いただけます。
調査の背景
コロナ禍によるリモートワークの拡大や、フリーランス人口の増加などにより、人々が自宅で過ごす時間は増加傾向にあります。このようなワークスタイルの多様化は、家の内装に対する意識も変化させています。
例えば、かつてのマンションの内装は「高級感」「重厚感」といったワードが人気でした。しかし、ここ数年は、どんなライフスタイルにも寄り添う親しみやすい空間づくりが求められているように見えます。マンションに対する価値観が「目に見える高級感」よりも、「暮らす人がWell-beingを感じられるナチュラルで上質なラグジュアリースタイル」に変わってきているのでしょう。
DNPでも、マンション等の集合住宅で高いシェアを持つ内装用化粧シート「WSサフマーレ」と「EB-F」といったオリジナルブランド製品を展開しています。これらの新柄は、その時々のトレンドを考慮して制作しており、やはり昨今は、温かみのある住宅空間のインテリアコーディネートを実現するのに最適なグレイッシュカラーの木目柄のラインナップが人気となっています。
こうした背景をふまえた上で、今回の調査では、DNP 5 Stylesで提案する空間に対して、見る人はどのようなイメージを持つのか、どのような空間に居住したいと感じるのかを分析しました。さらに、居住したい空間と憧れる空間のギャップを調査することで、今後の内装に求められているニーズを探っていきます。
<調査対象>
DNP社員381名(生活空間事業部163名 その他の事業部も含め218名)
<調査方法>
アンケート形式
<調査時期>
2024年10月15日~21日
<回答者属性>
・性別の内訳:男性67%、女性32%、回答なし1%
・世代別内訳:20代8%、30代19%、40代27%、50代36%、60代10%
アンケート結果から見えてきた「居住者が好む内装スタイル」の傾向分析
まずは基本的な項目から見ていきます。「インテリアに対するこだわり」について質問したところ、男性よりも女性のほうがインテリアへの関心が高いとわかりました。
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世代別では、若い世代ほどインテリアへの関心が高い傾向にありました。これから新しい部屋に住んだり、新たにマンションを購入したりする機会の多い若い世代のほうが、内装に強い関心を持っていることがうかがえます。
DNP 5 Stylesに関する調査も行っています。上述した5つのスタイルのうち、「居住してみたいスタイル」を質問したところ、Momentsが35%と最も高い割合となり、Tastyの22%、Flowの21%がそれに続きました。
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男女別に見てみると、男性はMomentsを選ぶ割合が高く、次いでTastyが選ばれています。一方で女性の場合は、Calm、Moments、Flowがほぼ同じ割合で並びますが、Tastyは低調だったことが特徴的です。
男女ともに割合が高かったMomentsに関しては、「普遍的で飽きがこないデザインだから」「自分のライフスタイルに合っていそうだから」「ナチュラルだから」という理由から選択した人が多くいました。その他のスタイルに関しても、上記の3つの理由を選んだ人が多かった一方で、「高級感を感じるから」「理想的で、憧れを抱く空間イメージだから」という理由を選択した人は下位にとどまりました。
一方で、「直感的に好きなスタイル」についての調査では、回答の傾向は少し変わってきます。この設問で最も人気が高かったのは、男女ともにTastyでした。男性には「居住してみたいスタイル」でも人気がありましたが、女性からの人気は低調だったことを考えると、大きなギャップが生じていることがわかります。「居住してみたいスタイル」では選択した人が少なかった「高級感を感じるから」「理想的で、憧れを抱く空間イメージだから」を理由として挙げた人が多かったことも特徴的な点です。
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こうした調査結果から、主に次の4点を満たすことが、居住者が好む内装スタイルを実現するためのポイントだといえるでしょう。
・普遍的で飽きのこないデザインであること
・自分のライフスタイルに合っていること
・高級感である、上質であること
・ナチュラルであること
このニーズは、上述した近年のトレンドと照らし合わせてみても大きな矛盾はありません。特筆すべきは、普遍性や快適性だけでなく、「高級感」や「上質さ」に対する潜在的なニーズを持つ人々が多く存在していることでしょう。
また、これまではダークなカラーで高級感やラグジュアリーさが表現される傾向にありましたが、現在は明るいナチュラルで洗練された色調で表現されるケースが増えています。これも注目すべき点です。
各世代から最も高く支持された普遍性を持つ「Moments」
今回の調査でもうひとつ特徴的だったのは、DNP 5 Stylesのなかでも「Moments」が最も多くの支持を集めたことです。
Momentsは、2023年に「Wa Story」から進化して誕生したスタイルです。日本の伝統美とモダンスタイルを融合した柔和なテイストで、心身の健康を促すWell-beingな暮らしを体現するスタイルとして設定しました。
明るい木質柄はまろやかな印象を与え、緻密な木肌表現は本物の木のような上質感を高めています。さらに、質感ある仕上げが、丁寧に作り込まれた印象を彷彿とさせます。トレンドである「普遍性」「快適性」に加え、素材の質感とデザイン性の高さが「高級感」や「上質なデザイン」を印象づけているといえるでしょう。
Momentsは、単に多くの支持を集めただけでなく、20代から60代までの各世代からも最も高く支持されました。特に、Momentsのペルソナとして設定している30代と40代では、それぞれ35%以上の支持を集めています。こうした結果から、Momentsが表現するスタイルは、マンション内装のトレンドとして今後「選ばれるスタイル」のひとつとなりえるのではないでしょうか。
まとめ
マンションの内装には、普遍性や快適性が求められる一方で、今回紹介した調査結果からは、トレンドだけではない潜在的なニーズも明らかになりました。
つまり、トレンドを測るには、短期的な流行や目に見えるニーズだけでは足りないといえます。内装を考え、デザインを決定する担当者には、アンケート調査のようなデータを通じて、潜在的なニーズを把握した上での空間づくりが求められていくでしょう。
DNP 5 Stylesは、国内外のトレンド情報を反映させ、最新の建材を使った上質な空間を提案しています。マンションの建設に携わるすべての方にとって、選ばれるマンションの参考となれば幸いです。
後編の記事では、内装建具や床材に関するアンケートや、内装選びのポイントについて解説しています。
- 2025年1月現在の情報です。
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