マンションインテリア動向調査レポート2024~2025
DNPでは、長年にわたりマンションのインテリアトレンド調査を行い、オリジナルブランド製品であるDNP内装用化粧シート「サフマーレWS」やDNPフローリング用化粧シート「BE-F」などの開発に活かしてまいりました。 本コラムでは、2025年7月に開催したセミナー「DNP Design Days 2025 Summer」でご紹介したマンションモデルルーム調査2024~2025から抜粋した内容を、インテリアコーディネーターや建築設計デザインに関わる皆さまに向けてご紹介いたします。
調査概要
首都圏・近畿圏・中部圏・九州圏における、新築分譲マンションの85物件97のモデルルームから専有部のインテリア調査を行いました。
調査期間:2024年10月~2025年2月
対象エリア:首都圏・近畿圏・中部圏・九州圏
調査物件数:85物件、97モデル
近年、複数の物件を総合ギャラリーで販売するデベロッパー様が増えており、モデルルームの件数が少なくなっている傾向があります。
調査結果
1.2024年~2025年のマンションインテリアカラー傾向
まず首都圏マンションのインテリアカラーの分布をご紹介します。ダーク、ディープの明度の低いシックなトーンが減少し、全体的に明るいインテリアが主流となっています。昨年に引き続きグレーインテリアがボリュームゾーンではありますが、頭打ちとなった印象です。グレーインテリアの傾向としては、全体的にナチュラル方向にふれたやさしいウォーム系が増加しています。また、郊外の若年夫婦や子育て世帯向けでオフホワイトのインテリアが見られ、オフホワイトの比率が上がっています。
またDNPとして注目したいのは、グレーの空間が一辺倒ななかで、穏やかなナチュラルインテリアが増加していることです。バイオフィリックデザインや、ウェルビーイングな暮らしを想起させるような、自然の要素を感じる爽やかで明るいインテリアが増えてくる兆しを感じました。
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次に近畿圏の傾向をご紹介します。首都圏と同じく、ダーク、ディープの明度の低いトーンが減少し、全体的に明るいインテリアが主流となっています。昨年に引き続きグレーインテリアがボリュームゾーンとなっていて、首都圏と同じ傾向です。ナチュラルインテリアも増加し、特に京都のモデルルームは風情あふれる落ち着いたナチュラル空間となっていました。
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2. 経年で見るインテリアカラーの変化
マンションモデルルームに使用されている建具、床のカラー変遷をご紹介します。まず、首都圏における建具と床のカラー変遷です。グレー、ニュートラルの無彩色系カラーが主流となり、インテリアカラーの傾向と同じく、建具カラーとしてのグレーも頭打ちになった印象があります。ダーク、ディープは減少の一途を辿っています。逆にペールカラーが増加しており、無彩色基調から健康的なナチュラルトーンへの兆しが見られます。床は建具同様、グレー、ニュートラルの無彩色系カラーが75%とボリュームゾーンとなり、ダーク、ディープの出現はありませんでした。フローリングも建具と同じくペールカラーが増加しています。
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次に、近畿圏における建具と床のカラー変遷です。グレーカラーが頭打ちになった首都圏に比べ、近畿圏では大幅な増加となりました。以前から近畿圏では一定のボリュームで見られたダーク、ディープカラーも近年は減少傾向にあります。床のカラーは、わかりやすい高級感を演出するダーク、ディープカラーがほとんど無くなり、グレー、ニュートラルの無彩色系で70%を占めています。
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3. DNPブランド製品における採用ランキング
※画像をクリックいただくと製品詳細をご覧いただけます。
近年、世界的にもさまざまなマテリアルを組み合わせるマテリアルミックスの空間がトレンドになっていますが、サフマーレWSにおいても非木質柄への注目が高まっています。サフマーレWSの採用ランキングTOP10の中にはフロストフィールやレザー柄が入ってきています。床は、抽象柄にも合わせやすいグレージュ系が上位にランキングされました。建具・床とも、これまでと比較するとやや明るめの傾向になってきているようです。ここで、2024年4月~2025年3月におけるサフマーレWSとEB-Fの採用ランキングをご紹介します。
DNP内装用化粧シート「WSサフマーレ」採用数量ランキング 2024年4月~2025年3月
1位:WS-5235E | 2位:WS-5160E | 3位:WS-5215E | 4位:WS-9001E | 5位:WS-5091E |
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6位:WS-5208E | 7位:WS-907E | 8位:WS-5210E | 9位:WS-5135E | 10位:WS-5245E |
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フローリングに用いられるBE-Fの出荷数量ランキングでは、 WSサフマーレと比較して色やデザインにばらつきがあり、幅広いコーディネートに対応している様子が伺えます。建具とのコーディネートの際に床の方が明るいバランスになることを考慮されたような品番が多くランクインしており、空間の上質感や表情の変化を与えることのできる品番に人気が集まっています。
DNPフローリング用化粧シート「EB-F」採用数量ランキング 2024年4月~2025年3月
1位:EBFW-1248 | 2位:EBFW-1193 | 3位:EBFW-1242 | 4位:EBFW-1210 | 5位:EBFW-1246 |
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6位:EBFW-1194 | 7位:EBFW-1181 | 8位:EBFW-1245 | 9位:EBFW-1216 | 10位:EBFW-1231 |
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4. デザイントピックス
調査したモデルルームからインテリアデザインのトピックスをご紹介します。
トピックス 1. 空間をゆるやかに仕切る
パンデミック以降、リビングの用途が多様化したことで、空間を小分けにするウォールドアの設置率が増えました。完全に間仕切ってしまうと空間が狭く感じてしまうという課題もあり、透過性のあるガラスなどを用いたウォールドアが多く見られました。空間をゆるやかに仕切りつつ、圧迫感を感じさせない設えです。モデルルームでは有償オプションの設定が多いと思いますが、モデルルームで体感するとオプション購入される方も多いのではないでしょうか。
画像はイメージで、実際のモデルルームの写真ではありません。 |
トピックス 2. R調や丸みのあるインテリア
近年のミラノサローネでもよく見られる R調(曲線や曲面のデザイン)や丸みのあるインテリアデザインに注目しました。最近はマンションの建築自体が従来の角ばった形状ばかりではなく、丸みを帯びたような形状や、曲線の要素をもったマンションをよく見かけるようになった気がします。建築や外装の丸みが、専有部の間取りやデザインにも反映されているところが増えています。特に、アイランドキッチンやダイニングテーブルに柔らかい曲線デザインが用いられていた事例が見られ、このようなデザインは空間の回遊性にも寄与していると思います。直線的なデザインよりも、やさしい印象で、よりぬくもりを感じ、心地良さを感じられます。また、高額マンションでよく見られる折り上げ天井も、曲線デザインが用いられ、柔らかい間接照明をより効果的に見せているところがありました。マンションの販売価格が高騰するなかで、高級感を表現する要素として、天井は意匠性があがってきているかもしれません。
画像はイメージで、実際のモデルルームの写真ではありません。 |
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トピックス 3. バイオフィリックデザイン
バイオフィリックデザインとは 建築や空間デザインにおいて、自然とのつながりを重視し、観葉植物を取り入れたり、日差しが差し込むことで自然とのつながりを求める 「バイオフィリア」 の概念を取り入れ、リラックス効果や集中力の向上が期待できるデザイン手法をさします。以前からグリーンや植栽を用いた空間演出はよく見られていましたが、今回のモデルルーム調査でも多くの事例が見られました。バイオフィリックデザインの視点としては、単にグリーンがあるだけでなく、「光による影」や「風による動き」といった「五感を刺激するような要素」も重要です。また背の高いグリーンやハンギングタイプは、垂直方向に空間を彩り、かつ間仕切りの役割を果たしていることもあると思います。
画像はイメージで、実際のモデルルームの写真ではありません。 |
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トピックス 4. 素材・テクスチャーの変化
DNPのサフマーレWSを始めとした表面化粧材の変化について取り上げます。インテリアオプションで天井や廊下壁面などの仕上を木目調にするモデルルームが多く見られるようになりました。これには昨今の壁紙デザインのクオリティが向上していることも理由としてあげられるでしょう。木質の要素が多いと、空間のぬくもりや安心感を感じます。
画像はイメージで、実際のモデルルームの写真ではありません。 |
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また、以前は 木目や単色が多かった印象のキッチン、洗面化粧台の面材ですが、石目や抽象柄の採用が多くなっています。同じく、リビングの建具や間仕切りウォールドア、収納扉にも抽象柄の採用が増えており、DNPでもラインナップの拡充に取り組んでいます。
下の画像は、サフマーレWSからラスターフィールという、大胆な抑揚と落ち着きのある輝きが魅力の意匠をご採用頂いた事例です。DNPでは特定の柄にフォーカスしない抽象柄を展開することで、木目や他の素材とのコーディネートの幅を広げています。色柄も壁紙との調和を意識したり、普遍的な柄を用いることでいつまでも飽きがこないようなデザインにしています。
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トピックス 5. 変化の兆し、明るめの空間
インテリアカラーの分布でご紹介したように、グレーの空間は変わらずボリュームゾーンではありますが、その空間は少しずつ明るく、温かみのあるベージュ・グレージュをベースにした空間に移行しているように思います。マンションの専有部分の面積が狭小化し、なるべく空間を広く見せたいという物理的な側面も影響していると思いますが、パンデミックの長い時間自宅にいる経験を経て、玄関をあけた瞬間に感じる、「安心感や清潔感・開放感」が明るいインテリア に求められている、というのも理由の一つかもしれません。ファッションを中心に話題になっているクワイエットラグジュアリーという、華美な装飾をせずに感じられる上質さ、というトレンドがインテリアにも波及しています。下の画像は、サフマーレWSをご採用頂いた実際のモデルです。
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おわりに
今回の調査では、長年続いてきたグレーのトレンドから、より温かみのあるグレージュやベージュのインテリアへとシフトしていること、また、多様なマテリアルを組み合わせた質感豊かな空間が増加傾向にあることが確認されました。ライフスタイルの多様化が進む中で、インテリアデザインには、そこに住まう人々に寄り添うことが求められています。一方で、マンションの販売価格は高騰しており、その価格に見合った高級感が、「目に見えるプレミアム感」ではなく、「本質的な上質な暮らし」として表現されることが求められていると感じています。
今後もDNPでは、ミラノサローネだけでなくさまざまな海外・国内のトレンドをリサーチし、DNP製品の提案に活かしてまいります。
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2025年8月時点の情報です。
このコラムで紹介した製品・サービス
関連製品・サービス
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主用途:ドア面材・壁面パネル
WSフネン-L (WSサフマーレボード)
多くの実績を獲得しているWSサフマーレのロングヒット柄やスタンダード柄から24品番を厳選し、引戸や不燃要求のある高齢者施設などにご利用頂けるよう、4尺幅対応の3mm厚不燃化粧板と2.5mm厚MDF化粧板を取り揃え... -
主用途:建具・収納扉(鏡面)
EBグランミラー(EB鏡面化粧板)
EBコーティングで、美しい鏡面性と油性マジックなどの汚れも乾拭きでき、加工性に優れているため、美しい仕上げが可能な化粧板です。Vカット加工が可能な化粧板とラッピング扉(1R・J型手掛けなど)をご用意しています。ハイグレードな建具・収納扉などにご利用いただけます。