世の中をクリエイター視点で見つめるIDC (Innovative Design Center) の活動 - パリ、NellyRodiとのコラボレーション

生活空間事業に欠かせない要素の一つ、デザイン。 DNPには、表面材の質感からコンセプトまで、空間におけるあらゆる解像度でデザインを手掛けるインハウスデザイン組織、イノベーティブデザインセンター/Innovative Design Center(以下IDC)が存在しています。IDCでは、様々なバックグラウンドを持ったクリエイターが、社内外の様々な人々と、日々新たな価値を世の中に発信し続けています。

以下は、IDCの関わったプロジェクトの事例です。

・染色家とのコラボレーションによる日本の生活空間の未来を考えるプロジェクト
Think Japan 現代に生きる日本の色 -藍- | コラム・記事 | ソリューション/製品・サービス | DNP 大日本印刷

・建築家とのコラボレーションによる表面材の開発
街のゲートとして緑とともに建物を縁取る 天然木の表情を感じられる木目調を採用したフォレストゲート代官山-アートテック建物探訪 | コラム・記事 | ソリューション/製品・サービス | DNP 大日本印刷

IDCは、世の中のあらゆる事象をクリエイター目線の切り口で見つめ、抽出したキーワードや価値観をヒントに日々行動しています。その切り口は決して一つではなく、社内デザイナーが何に普段、注目しているかという内発的なものから、社外の様々なパートナーとの対話からの抽出といった外発的なものまで多岐に渡ります。

今回はパートナーとの対話から世の中を見つめた活動の事例として、フランス・パリのブランドコンサルティングファーム NellyRodiとのコラボレーション事例をご紹介します。

NellyRodi は、1985年Nelly-Claire Rodi氏によって創立された歴史あるブランドコンサルタントです。ハイブランドファッション、美容、ホテル業界に多くのクライアントを持ち、インテリア、ファッション、自動車など幅広い業界のクリエイティブ活動をグローバルに支えるパートナーとして信頼されています。

今回、IDCはNellyRodi社が独自に毎年設定・発信している生活者像情報 “Life & Style” をベースに、IDCのデザイナーが普段見つめているもの、感じている要素を加え、NellyRodi社とディスカッションするワークショップを実施し、自分たちのクリエイティブ活動に則したテーマの抽出を試みました。

“Brightbound” – これからの世の中をどう良くしていくか

今回のワークショップでは、これからの生活者の価値観を表す“Superfine”(“真に良いもの” を求めて) “Serenity ” (自然と生きる。自然に生きる) “Synergy”(共創が開く新たな扉)“Surprising ”(型破りなポジティブマインド)に、今最も注目すべき“Phygital ”(仮想と現実の交錯点)を加えた5つのテーマを抽出しました。

これらのテーマを包括的に表すコンセプトを、我々は“Brightbound ” (明るい未来へ)”と名付けました。

昨今の社会や環境にまつわる大きな変化は、人々が本当に大切にすべきものは何かという価値観を際立たせました。その様々な価値観に共通して見られるのは、「これからの世の中をどう良くしていくか」 という方向性を意味する“Brightbound” だと我々は考えています。

以下に、4+1のテーマについて紹介します。なお、それぞれのテーマの中では既にDNPが世の中に提案を始めているイノベーションの事例が含まれています。

テーマ1) Serenity - 自然と生きる。自然に生きる。

人類が持っているテクノロジーやノウハウを、良い世の中の再構築のために最大限活用しようという考えです。この価値観では特に自然との共存や健康で健全な社会の確立をゴールイメージの一つとして活動するため、そのアウトプットは最新技術を使用しながらもナチュラルで優しさのあるものになるのが特徴です。

テーマ2) Superfine - “真に良いもの” を求めて

ラグジュアリーが向かう新たな方向性を示唆したテーマ。単に華美なものや目を惹くものではなく、普遍的で時代を超越した “真に良いもの”としての完成度の高さ、追求に価値観の重きを置きます。また、歴史、社会、環境的側面において価値が高いものに投資し、その完成度の高さが個性となって表れるのが特徴です。

テーマ3) Surprising - 型破りなポジティブマインド

良い世の中の実現のために物事のネガティブな側面やタブー的な要素を敢えて使用するなど、既存概念のゆさぶりや今までの考え方からの脱却に着目。ゆえにこの価値観による提案の着地点はしばしば驚きやユーモアと健全性を備えたものになることが特徴です。

テーマ4) Synergy - 共創が開く新たな扉

常に周りを巻き込みながら社会課題を解決するという価値観。ムーブメント、大衆化などの手法で、チーム、グループ、コミュニティー単位によって伝えたいメッセージを大きく、強くすることで社会の変革の実現可能性を高め、参加者は良いことをしている集団へ属していることへの充実感を得ます。

テーマ+1)  Phygital - 仮想と現実の交錯点

最後に、価値観とは別に、我々が最も注目すべきと考えるキーワード、それがPhygitalです。 Physical+Digitalを合わせたこのテーマは、急速に発展したメタバースやAIなどの新しい技術が現実空間にどのような変革をもたらすかに着目し、積極的に取り入れていこうという考えです。単に世の中を便利、快適にするためのみならず、いかに正しくデジタル技術を使用すべきかという倫理的側面も着目すべきであると我々は考えています。

<トピックス>
“Phygital Moodboard” – DX時代に向けた新たなムードボードの取り組み

生活者の価値観を表す“Superfine” “Serenity” “Synergy” “Surprising” の4つのキーワードについては、より直感的にイメージを伝えるためのムードボードを作成しました。
これらのムードボードはオンラインプラットフォームMattoboard で作成した「デジタルムードボード」と、それを参考に実際の素材を触り、作成した「フィジカルムードボード」を1セットとしたハイブリッド形式の “フィジタルムードボード/Phygital Moodboard” で作成されています。Phygital Moodboardは、デジタル移行期に対するIDCのハイブリッドな提案です。デジタルムードボードは、お客様やパートナーとの双方向的な対話を促進し、画面共有によるリアルタイムでの修正を容易にします。その一方、IDCは、デジタル時代の今こそ、直接素材に触れてクリエイターとしての感性を反映させる工程の重要性や、実素材がもつ説得力を忘れてはいけないと考えています。その結果、伝統と革新、フィジカルとDXの融合と言える「フィジタルムードボード/Phygital Moodboard」が完成しました。

IDCのクリエイター視点に基づく活動事例、いかがでしたでしょうか。我々IDCは、この視点を大切にしながら、社会に新しい価値を提案し続けています。また、私たちの取り組みを通じて、共に新たな可能性を探求し、双発的なアイデアを実現する機会を創る存在であり続けることを目指しています。お困りのことや、こんなことができないか というご相談内容をお持ちの際は、ぜひご連絡ください。共に創り上げるプロジェクトについてもお話しできることを楽しみにしています。

2025年9月時点の情報です。

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