資源枯渇への対策を考える─建築の持続可能性を高める代替素材の選択肢

近年、建築の世界では「サステナブル」や「SDGs」といった言葉がすっかり定着しました。その一方、建築物の設計を考える上で、「資源の枯渇」がより切実な問題になっています。これまで当たり前に手に入っていた建材の調達が難しくなる時代が来るかもしれません。
このコラムでは、建築業界が直面している資源枯渇の現状を整理し、私たちが今取り組むべき対策や未来に向けた新しい設計の考え方について解説します。そして、資源枯渇対策の一手となり得る「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」についても紹介します。設計者の方々にとっても、これからの材料選定のヒントになれば幸いです。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNPモビリティ&リビング事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

資源枯渇とは─「持続可能性の危機」の背景と現状

「資源枯渇」とは、地球にある天然資源を、自然の再生スピードよりも上回るペースで消費し続け、使い尽くすことを指します。砂、石、木材、金属といった建築に欠かせない素材の多くが、この瞬間も減り続けているのが実情です。これは単に「材料がなくなる」という問題に留まらず、建築文化そのものが維持できなくなる「持続可能性の危機」を意味します。

今後も豊かな街づくりを続けていくためには、資源枯渇の背景を正しく理解し、資源に対する意識を変えていくことが重要です。

複合的な要因によって生じる資源枯渇

資源枯渇は複合的な要因によって生じています。例えば、骨材として使われる砂や砂利は、世界的な建築需要の拡大によって消費量が激増しました。鉄、銅、アルミといった金属の場合は、需要増だけでなく、地政学的リスクによる供給制限も資源枯渇の要因といえるでしょう。石材については、消費ペースの加速に加え、採掘現場における強制労働をはじめとする人権問題が市場のあり方を根本から変えつつあります。

近年は、さまざまな資源において、長く懸念され続けていた多様な課題が表面化しており、資源供給の安定性を脅かす深刻な要因として認識されています。

天然資源の約半数を占める建設業の大きな責任

世界の原材料抽出量 のうち約半数が建設関連で消費されていると見られています。多くの建造物を造り続けることは、膨大な地球の資産を切り崩していることに他なりません。

つまり、設計者がどのような素材を、どれくらい、どう使うかを判断することは、建造物の仕上がりだけでなく、地球の未来にも直結するといえるでしょう。自らの選択が地球環境にどれほどの影響を与えるかを考えることは、建設業に関わる私たちに課せられた重要な課題です。

ウッドショックから学ぶ供給リスクの顕在化

ウッドショックのイメージ

コロナ禍の時期から「ウッドショック」が建築業界に襲いかかりました。ウッドショックとは、新型コロナウイルス感染症の流行、世界的な住宅需要の急増などによって木材の価格が高騰し、建築現場に木材が届かなくなった事態のことです。現在でも尾を引くこの出来事は、特定の天然素材に過度に依存するリスクを私たちに強く印象付けました。

国際的な情勢や資源の枯渇状況によっては、求める素材が入手困難になったり、予算を大きく超過したりする事態が起こり得ます。木材だけでなく、コンクリートの原料となる砂や、外装を彩る石材も同様です。

こうした経験から、特定の天然資源に頼りすぎない、戦略的な材料選定が求められるようになっています。

建築業界が取り組む資源枯渇への主要な対策

資源枯渇への危機感が高まるなか、建築業界ではすでに具体的な対策が動き出しています。「素材転換」「プロセスの効率化」「環境規制対応」の3つの視点から見ていきましょう。

【素材転換の推進】代替建材の積極活用

最も直接的な対策は、枯渇が懸念される天然素材から持続可能な「代替素材」へと切り替えることです。

例えば、天然木を使う代わりに、リサイクル可能な金属に木目の質感を再現したパネルを使用する方法があります。あるいは、希少な天然石の代わりに、環境負荷の少ない工業製品を採用することも可能です。

代替素材の活用により、自然環境にある限られた資源の消費を抑えながら意匠性を損なわない建築が実現できます。自然素材の意匠を重視しながら地球の資源を守るという価値観は、これからのスタンダードになっていくかもしれません。

【プロセスの効率化】BIM活用による精密な材料積算とロス削減

次に注目されているのが、IT技術を使った「ムダを出さない」工夫です。その代表が「BIM(Building Information Modeling)」の活用です。

BIMとは、材料やコストなどの情報を組み込んだ建築物の立体モデルを作り、建築の各プロセスで活用する技術です。設計段階では、材料の種類や寸法などを入力すれば、必要な材料の量を正確に計算できます。

現場で「材料が足りないから追加発注する」「余ったから捨てる」といったロスを最小限に抑えることは、資源の節約に直結します。デジタル技術は資源を守るための強力な武器といえるでしょう。

【環境規制への対応】LCAの実施による資源循環状況の可視化

近年、建築物の価値を測る基準として「LCA(Life Cycle Assessment)」という考え方が重要視されています。LCAとは、製品・サービスのライフサイクルを通してどれだけ環境に負荷を与えたかを評価することです。

建築物の場合、材料調達から、建設工事、日々の運用、そして最終的な解体に至るまで、正確に数値化して評価します。経済産業省もこの資源循環の「見える化」を推奨しています。「建築の際に選ぶ素材が将来的にどの程度リサイクル可能なのか」を示す客観的なデータを提示し、資源循環のプロセスを可視化することは、これからの設計者が果たすべき重要な責務といえるでしょう。

未来を拓くサーキュラーエコノミーへの新たな挑戦

サーキュラーエコノミーのイメージ

現在、経済のあり方は「今ある資源をどう守るか」という視点から「資源を循環させ続ける」仕組みづくりへの大きな転換期を迎えています。この新たな経済の仕組みは「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」と呼ばれ、製品を設計する段階から「ゴミを出さない」「資源を使い続ける」ことを前提とした考え方です。

建築の分野でも、サーキュラーエコノミーを取り入れた新しい挑戦が始まっています。

廃棄物を資材へと再生させるアップサイクルの導入

「アップサイクル」とは、本来であれば捨てられるはずだった廃棄物に、デザインやアイデアを加えて、元の製品よりも価値の高いものに生まれ変わらせることです。

例えば、建築現場で出た端材を組み合わせて、その建築物にしかないオリジナルの家具や内装材を作るといった試みがあります。単なるリサイクル以上に、新しい美しさを生み出す姿勢が求められています。

解体後の再資源化を前提としたサスティナブル設計

これまでの建築は「建てて、壊して、捨てる」という一方通行の流れが主流でした。しかし循環型建築(サーキュラーアーキテクチャー)では、数十年後の解体を見据えた設計を行います。

例えば、部材同士を接着する際に、接着剤を使わずボルトで固定することで簡単に分離できるよう設計する、といった工夫です。簡単かつきれいに分解できれば、素材ごとに分別してリサイクルすることが容易になります。

設計の最初の段階で「どう壊して、どう次につなげるか」までを考えることが、真の意味での持続可能な設計といえるでしょう。

都市鉱山の有効活用

近年「都市鉱山」という言葉が使われるようになっています。街にある建築物や製品に使われている金属資源をひとつの鉱山に見立てる考え方です。

例えば、アルミは非常に優れたリサイクル特性を持つ素材です。一度製品になったアルミを溶かして再び地金に戻す際に必要なエネルギーは、新しくアルミニウムを製造する場合のわずか3%といわれています。

リサイクル効率の高い素材を積極的に選ぶことが、資源枯渇を食い止める大きな力になる可能性を秘めています。

資源枯渇対策と意匠性を両立するアートテックの有用性

アートテックのイメージ

資源枯渇への対策を高いレベルで実現できる素材に、DNPの内・外装焼付印刷アルミパネル「アートテック」があります。アートテックは、循環型素材であるアルミに高精細な印刷を施して天然素材の美しさを再現した建材です。

アートテックは、木目や石目をリアルに再現し、天然資源の代替建材としての役割を果たします。また、伐採や採掘が必要な天然資源の消費抑制にもつながり、環境保護と意匠のこだわりを両立できます。

アルミは、鉄やコンクリートに比べて非常に軽量であることも大きな利点です。建築物全体の重量が軽くなれば、それを支えるための基礎や構造体にかかる負担が減ります。結果として、建築物全体で使うコンクリートや鉄筋の量を抑えることにもつながり、資源消費の抑制という相乗効果を生み出します。軽量であることによって、天然素材では設置が難しい場所への活用も可能です。

さらに、表面に施された高耐候なフッ素焼付塗装は、色あせや劣化に強く、建築物の寿命を延ばす特長があります。メンテナンスや張り替えの頻度が少なくなり、将来的に投入される補修用資源を最小限に留められます。

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代替素材としてアートテックが用いられた事例紹介

ここからは天然素材の代替としてアートテックが採用された事例を紹介します。

徳洲会ジムナスティクスアリーナ

徳洲会ジムナスティクスアリーナの外観

建物正面の軒天や壁面、ルーバーに、穏やかな色調の木目柄アートテックが採用されています。設計の段階で木の質感が重要視される一方で、本物の木材では難しい「複雑な形状への加工」と「長期的なメンテナンス性の確保」が課題でした。

アートテックはアルミの加工性を活かして自由な形状を実現しつつ、木のような温もりと高い耐候性を両立しています。周囲の植栽と調和し、利用者を温かく迎えるランドマークとしてのデザインが高く評価されました。

関連ページ:アートテック採用事例 徳洲会ジムナスティクスアリーナ

高輪ゲートウェイ駅

高輪ゲートウェイ駅の外観

高輪ゲートウェイ駅は鉄道施設に求められる安全基準を満たしつつ、天然木を使用して木の温もりのあるデザインを実現した事例です。駅外装やホームの天井などに天然木の色合いを再現したアートテックが使用されています。

駅舎という公共空間では、素材の耐久性が極めて重要です。アートテックを使用することで、建築時の美しさを長期間保てることに加え、メンテナンスの頻度を軽減できます。日本らしい和の意匠と高い耐候性、メンテナンスの負荷軽減を実現しています。

関連ページ:アートテック採用事例 高輪ゲートウェイ駅

フォレストゲート代官山

フォレストゲート代官山の外観

代官山の街並みになじむ「木箱」のような外観を構成するため、バルコニーや軒天に木目柄アートテックが採用されています。天然木では避けられない色のばらつきや腐食という課題を、アルミ素材ならではの安定した品質と耐久性で解決しました。

緑豊かな植栽と呼応する木の質感に「本物と見間違えるほど」という声をいただき、アルミの高いリサイクル性も環境意識の高い施主からサステナブルな選択として支持されました。

関連ページ:アートテック採用事例 フォレストゲート代官山

テイケイ新宿ビルヂング

テイケイ新宿ビルヂングの外観

テイケイ新宿ビルヂングでは、オフィス街に位置するビルの外装に金属調柄アートテックが採用されています。日光の当たり方によって金属柄の濃淡や色味に変化が生まれ、アール・デコ調の建築デザインを引き立てているのが特徴です。

アルミを基調としたアートテックは非常に軽量なため、実際の金属を使用するよりも建築物の構造体への負担を抑えられます。都心部における「意匠性の追求」と「構造的な合理性」を両立した代替事例として注目されています。

関連ページ:アートテック採用事例 テイケイ新宿ビルヂング

ダイワロイネットホテル東京京橋PREMIER

ダイワロイネットホテル東京京橋PREMIERの外観

高さのあるホテルのエントランスゲートに、石質素材柄のアートテックが導入されています。アルミ素材で作られた軽量のアートテックは、天然石と比較して非常に軽量です。そのため、高所への施工性が向上するだけでなく、下地にかかる負担も軽減できます。石の持つ重厚な質感を忠実に再現しつつ、メンテナンスの負担も抑えた実利的な代替素材といえます。

関連ページ:アートテック採用事例 ダイワロイネットホテル東京京橋PREMIER

まとめ

資源枯渇は遠い未来の話ではなく目の前にある現実的な課題です。世界の原材料抽出量の50%近くを占める建設業に携わる私たちは、今こそ素材の選び方や設計のあり方を見直すタイミングに来ています。

今求められているのは、天然素材に過度に依存するのではなく、リサイクル性に優れ、かつ天然素材の消費を抑制できる代替素材を賢く活用することです。それはデザインの力で地球を守るという、これからの設計者として必要な選択といえるでしょう。美しい街並みを次世代へつなぐために「アートテック」という選択肢を、持続可能な建築にぜひお役立てください。

【参考】出典元
建築物の建設に伴うエネルギー消費に関する分析手法および削減手法について|NTTファシリティーズ総研 PDF が開きます
成長志向型の資源自律経済の確立に向けた取組について|経済産業省 PDF が開きます
BIMとは?|公益財団法人 日本建設情報技術センター【JCITC】
LCAによる資源循環の評価方法 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute
都市鉱山とは?|産総研

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  • 2026年2月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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