ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.3

2026年4月、イタリア・ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2026」。DNPでは社員が実際に現地を訪れ、200を超えるブランドの視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、ミラノデザインウィークでの展示の様子について、Vol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。このVol.3のコラムでは、Edra、Moroso、Kartell、そしてARMANI/CASA、FENDI Casa 、キッチンブランドからSnaidero、Arclinea、Veneta Cucineについてご紹介します。

すでにリリースしているミラノデザインウィーク2026に関するコラムは各リンクからご確認ください。
ミラノデザインウィーク2026 速報ハイライト
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.1
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.2
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.4(7月以降に公開予定です)

2026年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

Edra ブランドサイト
2026年のEdraは2点の新作を発表しました。Rho FieraとPalazzo Duriniの2つの会場では、ブランドらしい華やかさを感じさせながらも、穏やかで心地の良いくつろぎの空間が広がっていました。特にFieraの会場では、昨年に続いて全面ミラー張りのインスタレーションが展開され、その空間には巨大なLEDウォールの映像が映し出されます。自然の風景から都市の情景までさまざまに切り替わる映像は背景となり、無限に広がる鏡の世界で、家具や人と混ざり合い一体となるのです。それはまるで、Edraの家具とともにさまざまな時間や場所を旅している感覚であり、どんな空間でも時間を超えて人の暮らしに寄り添い続けるというブランドの思想を感じられる展示となっていました。

Photos by Edra

今年発表された新作家具を2点紹介します。まずは「Anywhere」。Edra独自の技術であるインテリジェント・クッションにより、自由自在に角度を調整できる背もたれが特徴で、使う人のその時の気分や過ごし方に優しく寄り添ってくれるソファとなっています。さらに背もたれ自体も片側内部の軸によって可動するので、簡単に座面の奥行きまでも調整が可能となっているのです。ひとりでゆったりと身体を預けることも、両側から背中合わせに座って会話を楽しむこともできる「Anywhere」は、直感的な操作でさまざまなシチュエーションに対応できる、Edraのモノづくりの哲学を体現した一品となっていました。

Photos by Edra

続いて「Dilly」。手作業で丁寧に仕上げられたポリカーボネート製の照明は、風に揺らぐかのような軽やかなフォルムを持ち、繊細さと力強さが共存しています。5段のパーツで構成された照明部分は、一部は取り外しや組み替えが可能な仕様となっており、構成によって多様な表情を楽しむこともできます。光を灯すことで浮かび上がる陰影のゆらぎが、人々を魅了しながら空間にやわらかな奥行きをもたらすのです。「Dilly」はインテリア用とアウトドア用の展開があり、カラーはゴールドと透明シルバーから選ぶことができます。

Photos by Edra

Text by Taisuke Watanabe

Moroso ブランドサイト
Morosoは、フラッグシップストアにて空間と家具の関係を再定義するインスタレーション「I feel space」を発表しました。本インスタレーションは、空間を「固定された背景」としてではなく、「人の動きや感覚によって立ち上がる存在」としてとらえる試みです。キュレーションを担当したPatricia Urquiolaは、フラッグシップストアを“生きた素材”として扱い、空間・素材・身体の関係性を再構築しました。
展示空間は、収縮と拡張を繰り返す構成とし、テラコッタやサンドといった温かみのある色彩を基調に、触覚的かつ連続的な体験を創出。Cimento®を用いたカウンターや壁面が空間全体に一体感をもたらし、訪れる人の身体感覚に寄り添います。
ウィンドウには画像1枚目のHeimo Zobernigによる「Dammi i colori」を配置し、原色(RGB)による柔らかな彫刻が来場者を迎えます。

Photos by Lorenzo Bacci 

Patricia Urquiolaがデザインしたソファコレクション「Cuadra‑Soft」は、幾何学的な明快さと包み込むような快適性を併せ持つアイコニックなシリーズとして展開されてきました。本年は、その既存コレクションに対する新たな展開として、「Cuadra‑Soft Edge」が発表されました。
本モデルは、従来の「Cuadra‑Soft」の構造的な美しさとゆったりとしたボリュームはそのままに、ディテールに新たな解釈を加えたアップデートバージョンです。特徴的なのは、アームやシートの輪郭をなぞる縁取り部分の変化です。これまでの控えめなパイピング(縁取り)に代わり、「Edge」では柔らかなフリンジ状のディテールが採用され、ラインにより豊かな素材感と触覚的な存在感が与えられています。

Photos by Alessandro Paderni

Text by Fumika Yoshikura

Kartell ブランドサイト
Kartellを象徴するロゴは「赤」ですが、毎年新たな章を書き加えるページを「白」とし、ミラノサローネのスタンドは白を基調に構成されていました。また「白」はKartellのコレクションに現れる多様な文化やアイデアの統合ともとらえています。今年のスタンドは、最新のアイデアに特化した展示、現行コレクションの展示、ミーティングや作業空間のための機能的な空間、といった3つの異なるエリアで構成されていました。
さらに一部のエリアでは絵画とそれに由来したカラーの壁面で空間が彩られていました。Kartellは、アイデアやストーリーが生まれる過程において、アナログとデジタルの対話がますます繊細になっているととらえています。これらの絵画はAIによって生成されたもので、AIはビジョンを具現化するために、イメージを補完するツールとして位置付けています。家具を単一のプロダクトとしてだけでなく、こうしたイメージとの関係性を通じて使用空間を想起させる構成となっていました。

Photos by TOYO KITCHEN STYLE

Edward Barber & Jay Osgerbyによってデザインされた「SAVOIA」は、軽やかさ、精密さ、造形的な厳格さを体現したチェアです。スリムな印象を与えるダイキャストアルミニウム製のフレームが特徴で、座面と背面はレザー・曲木など、さまざまな素材を選択することができます。
続いて、Erwan Bouroullecによるデザインの2つの製品を紹介します。「SNIK」は、再生テクノポリマーのボディとスチール構造を組み合わせて構成された、ミニマルなチェアです。交換可能なカバーシステムにより、単一の空間や特定の用途に縛られることなく、時間とともに変化し続ける存在として設計されています。そして、シェルフシステム「LAD」は、再生テクノポリマーと木質仕上げを組み合わせた棚、そして壁面に取り付ける支持構造によって構成されており、さまざまなレイアウトを可能にし、用途や環境に応じて柔軟に適応します。

Photos by TOYO KITCHEN STYLE

Text by Chihori Kunito

ARMANI/CASA ブランドサイト
今年のテーマは「Origins(起源)」で、ミラノ コルソ ヴェネツィアのARMANI/CASA本店にて発表しました。1階では、8つの代表的な作品をオリジナルと最新バージョンで展示し、過去と現在のあいだにある連続性と変化を表現しています。店舗を外から見るとオリジナルバージョンのみが視認でき、最新バージョンはフロストガラス越しのシルエットとして現れます。店内に入って初めて、その全貌が明らかになります。
2008年に発表されたアームチェア「BALOON」は、バウハウスの影響を受けた曲線による彫刻的なデザインが特徴です。新しいバージョンは、ミントグリーンのBERGENファブリックで仕立てられ、軽やかでエレガントな印象に仕上げられています。

Photos by Giulio Ghirardi

上階では、アルマーニの住まいに着想を得たリビング空間が広がっています。大きな手描きの水彩画が各エリアを象徴的に定義し、家具や素材、光が調和しながら、洗練された空間を生み出しています。
日本から影響を受けたマウンテンルームは、暖炉と大きな窓を描いた壁面により、瞑想やリラクゼーションへと誘う心地よい隠れ家のような雰囲気を生み出しています。「PLAY」シリーズから、起毛したウールのBRETAGNEファブリックを用いたソファや、ナチュラルレザーとカナレットウォールナットを組み合わせたブックケースが配置されています。
続いて、アルマーニが好んだとされるテーブルゲームを取り入れた空間では、ミラノの自邸にあるギャラリーウォールを描いた背景をもとに、新作の「BORGONUOVOゲームテーブル」を展示。チェアは、フラワーデザインラインArmani/Fioriのコンポジションに着想を得たBRIGHTONジャカード生地をまとった「CLASSIC」が設えられています。柔らかな色彩は、ゲームテーブルのデザインと呼応するモノクロの市松模様の床と対照を成していました。
1階では家具を服のピースのように個別に展示し、上階ではファッションのコーディネートのように空間全体を構成しており、ファッションブランドならではのロマンチックな演出が印象的でした。

Photos by Giulio Ghirardi

Text by Chihori Kunito

FENDI Casa
FENDI Casaは、カラーを主役とした新コレクションを発表しました。洗練された色彩とその組み合わせを探求し、それらが美的表現として機能します。この世界観を表現するため、ピアッツァ・スカラのブティックは、赤、青、緑、さらにはゴールドやマスタードに至るまでの色彩をテーマにした視覚的な旅として演出されています。本コレクションでは、ブランドの象徴であるクラフツマンシップ、素材へのこだわり、そして現代的なデザインアプローチを融合し、空間に新たな表情をもたらします。イタリアのルネサンスやバロック様式、シチリア、ローマ、ナポリの宮殿に見られる多色大理石や精緻な装飾を現代的に再解釈した空間が展開されています。
Toan Nguyenデザインの「Podium」はフラットなベース構造が特徴のソファです。東洋的なミニマルデザインから着想を得ており、軽やかな印象と、しっかりとした構造を両立しています。直線型とモジュール型があり、ベースは金属・木材・レザーから選択可能。また、大理石・木材・羊皮紙仕上げのサイドテーブルを一体的に組み合わせることができます。FENDI Casaとして初めて、伝統技法による羊皮紙仕上げを採用しています。

Photos by FENDI Casa

Lewis Kemmenoeデザインの「Macula」はコーヒーテーブルとフォールディングスクリーンのコレクションです。上質な木材と金属を組み合わせた寄木細工(マルケトリー)の美しさを表現しています。
コーヒーテーブルは、流れるようなフォルムと丁寧な職人技により、どこか原始的で力強い美しさを感じさせます。エルム材やスモークドオークのインレイ(象嵌)が素材本来の魅力を引き立て、さらに金属パーツが加わることで、彫刻のような存在感のある天板に仕上がっています。
フォールディングスクリーンはFENDI Casa初となる間仕切りで、同デザイナーの美学と、同じく寄木細工の技術を取り入れたデザインです。エルム材のパネルに木材と金属を組み合わせ、自然な曲線を持つ立体的でアート性の高い表面を生み出しています。さらに、真鍮製のFFロゴ入りヒンジ(蝶番)が、機能的なパーツでありながらデザインのアクセントとして際立ち、ブランドの遊び心を表現しています。モジュール式で使い方の自由度が高く、空間を仕切ったり、インテリアのアクセントとして取り入れたりと、現代的な住空間に柔軟に対応します。

Photos by FENDI Casa

Text by Fumika Yoshikura

Snaidero ブランドサイト
創業80周年を迎えたSnaideroは、「Synaesthesia(共感覚)」というコンセプトを軸にEuroCucinaに出展しました。「多感覚的知覚」という概念にもとづき、キッチンとリビングの境界を溶け合わせ、連続してつながる一体的な空間のあり方を提示しています。キッチンはその中心的存在となり、そこからリビング空間が展開し、融合していきます。壁面システム「Modula」が設えられた空間では、床置き型のベースユニットがリビング、ダイニング、キッチンを緩やかにつなぎ、3つの機能がシームレスに連続しています。モジュラーキッチン「Quadra」では、2つのアイランドカウンターを結ぶように開口部を伴った収納が設けられており、機能性と同時にリビングへの連続性を感じさせる構成となっています。また、壁面収納には、リブ加工を施したアルミニウムと明るい色調のウォールナットを組み合わせた新しい面材が用いられており、空間に繊細な陰影と温かみを与えています。

Photos by Snaidero

Snaidero Sistemaのモジュラーキッチン構成のひとつである「Orbita」は、キッチンを軸に空間が回遊しながら連続する構成となっています。正面のカウンターはわずかに傾斜を描き、中央がへこんだようなデザインとなっており、空間の回遊性を高める印象を与えています。また、壁面システムにはキッチンと同じ面材をリビングでも使用できるようにすることで、両者の境界がよりあいまいになっています。やや紫味を帯びた面材には、麻などの自然素材を染料として用いたサステナブルなマテリアルが採用されています。

Photo by Snaidero

Text by Chihori Kunito

Arclinea
空間と形態の対話から生まれた、Antonio Citterioによる新作キッチン「Kora」。彫刻を思わせる、空間に浮かび上がるような曲線的なアイランドが特徴です。収納面材には、金属の埋め込みハンドルを特徴とする「Italiaドア」が採用されています。既存の素材に加え、大理石が新たに導入され、コレクションはさらに強化されました。Arclineaのキッチンは多様なマテリアルの組み合わせが可能ですが、なかでも天板に大理石、扉にステンレスを用いた仕様が最も人気だといいます。

Photos by Arclinea

Veneta Cucine
今年のコンセプトは「Continuous Space(連続する空間)」です。プロダクトを通じて住空間を動的かつ相互接続されたシステムとしてとらえ、室内と屋外が対話し、住宅内の各空間が緩やかにつながるものとして解釈しています。また、Electroluxとの協働により色彩研究が進められ、自然トーンや淡い色、パステルカラーを基調とした共通のカラースキームが生まれました。キッチン「Iconica」では、新しい仕上げ「Canneté」を発表しました。縦方向のフルーティング加工を施したマテリアルにより、触覚的かつ視覚的に強い存在感を持つ表現を実現しています。画像は、新色となるラッカー仕上げのマットカラー「Meringa」です。

Photos by Veneta Cucine

編集後記

筆者にとって初めての視察となったミラノデザインウィークですが、街全体の賑わいと展示の規模の大きさには圧倒されました。目に映るものすべてが新鮮で刺激的であり、街並みの鮮やかさや、街を行き交う人々のファッションセンスは目を見張るものでした。
一方で、滞在中は寒暖差が想像以上に大きく、朝晩の冷え込みや日中の強い日差しに体力を奪われる場面も少なくありませんでした。また、今年は例年以上に事前登録や入場予約が必要となり、スケジュールの構築にも苦労しました。近年はフォーリサローネに注力するブランドも増えており、事前準備が視察の質を大きく左右すると感じます。
その反面、街中の展示にはふらりと立ち寄る来場者の姿も多く見られ、フォーリサローネがより市民に開かれたイベントとして広がっている印象も受けました。

ミラノサローネにおいて、今年はユーロクッチーナとサローネ・デル・バーニョの開催年であり、キッチンおよびバスルーム・洗面分野の展示が中心となっていました。特にキッチン領域では、大面積に木質素材を取り入れた提案や、リビング・ダイニングとシームレスにつながる空間構成がさらに進化しており、有機的な曲線を描くデザインも印象的でした。AI技術を活用した調理システムも多様に展開されていましたが、その存在感は控えめで、空間との調和が図られている点に興味を惹かれました。また、金属素材においては木質との相性を意識した暖色系のカッパーが用いられる事例も見られ、空間全体としてのあたたかみや居心地の良さがこれまで以上に重視されていると感じました。
初めての視察ではありましたが、現在の潮流と今後の方向性を体感できる貴重な機会となりました。

Text by Fumika Yoshikura

Editor紹介

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネート提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

国内住宅内装分野を中心にDNPオリジナルの内装加飾シートWSシリーズの開発に携わる。
ミラノサローネ他、海外の展示会にも足を運びながら、国内インテリアの向かう先を見据え、
日々開発と発信を行っている。

国内外の外装分野を主軸として、自社製品であるアルミ加飾パネル「アートテック・Artellion」の開発に携わる。国内を中心とした商業施設調査では非住宅製品の開発に役立て、アートテック・Artellion分野では海外の販促にも関わる。

  • 2026年6月時点の情報です。

未来のあたりまえをつくる。®