高断熱性能と機能性フィルムを併せることで安心安全な物流をサポート
DNP多機能断熱ボックス
高断熱ボックスと熱設計技術による温度品質とDNPの機能性フィルム技術との組み合わせで、保管・輸送に関する温度逸脱などのさまざまなトラブルから製品を守ります。
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目次
断熱とは
「遮熱」と「断熱」の違いとは?―高性能保冷の鍵を握る熱対策技術
熱は、赤外線などの波動(電磁波)によって空間を移動します。例えば、日なたにいると温かく感じるのは、太陽からの赤外線によって輻射熱(ふくしゃねつ)が身体に伝わるためです。このような放射される熱を防ぐ手法が「遮熱」であり、主に輻射熱を反射・遮断することで、熱の侵入を抑える技術です。
一方で、「断熱」は熱の“伝導”を抑えることで、外部からの温度変化を容器内部に伝えにくくし、内部の温度を一定に保つ効果があります。つまり、熱の移動そのものを遅らせる構造的な工夫が「断熱」です。
一般的な保冷シッパーでは、遮熱素材を使用しても、その効果は外気温以上に温度が上がるのを防ぐ程度であり、長時間の温度維持には限界があります。特に外気温が高い環境では、内部温度の上昇を完全に防ぐのは困難です。
そのため、長時間・高精度な温度管理が求められる場面では、遮熱だけでなく高断熱材による密閉構造が重要となります。DNPでは、熱の侵入を大幅に抑える高性能断熱材と気密性の高い構造設計により、より安定した温度制御を実現。外気温の影響を受けにくい、信頼性の高い保冷環境を提供しています。
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製品とサービスの特長
特長1:高い断熱性能(保冷性能)
高性能断熱材の効果を最大限に引き出すには「気密性」が鍵
真空断熱材のように、非常に高い断熱・保冷性能を誇る断熱材を使用しても、ボックス本体の気密性が低ければ、その性能は十分に発揮されません。外気が入り込みやすい構造では、せっかくの高性能断熱材も本来の力を活かしきれず、保冷効果が大きく損なわれてしまいます。
そのため、断熱材の性能を最大限に活かすには、ボックス全体として高い気密性を持つ構造設計が不可欠です。
一方で、物流や現場での運用を考慮すると、断熱ボックスは折り畳み可能であることも重要な要件です。しかし、「折り畳める構造」と「高い密閉性」を両立するには、高度な設計技術と精密な構造設計が求められます。
当社では、現場の使いやすさと高性能を両立した断熱ボックスの設計・開発を通じて、保冷輸送の効率化と品質向上を実現しています。
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高断熱と作業効率を両立した「DNP多機能断熱ボックス」
DNP多機能断熱ボックスは、すべての製品が折り畳み可能な構造でありながら、高い密閉性も兼ね備えています。この独自構造により、使用している高性能断熱材の効果を最大限に引き出すことができ、一般的な断熱ボックスを上回る優れた保冷・断熱性能を実現しています。
物流現場で求められる作業効率と、温度管理における確実性。その両立をめざして設計された当製品は、冷蔵・冷凍輸送どちらのニーズにも対応可能です。
以下に、実際の温度シミュレーションデータの一例として、冷蔵品輸送管時における温度推移をご紹介します。DNP多機能断熱ボックスの実力を、ぜひご確認ください。
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電源不要で温度管理を実現
DNP多機能断熱ボックスは、優れた断熱性能を備えており、電源を使わずに内部温度を長時間一定範囲に保つことが可能です。生鮮・冷凍食品など、温度管理が不可欠な品目において、さまざまな現場課題の解決に貢献します。
従来の保冷シッパーでは、特に夏場の積み替え時や常温車両での輸送において、冷蔵・冷凍品の温度維持が難しいケースが多く見られました。しかし本製品を使用することで、コールドチェーン(※1)を途切れさせることなく、常温車での輸送や一時的な保管が可能になります。
さらに、置き配対応による再配達削減や、ドライバーと荷受け双方の負担軽減といった社会課題にも寄与。2024年問題に代表される物流の人手不足対策としても、有効なソリューションです。また、冷凍・冷蔵品の緊急輸送や、計画停電時の簡易冷蔵庫としても活用いただけます。
その他にも、GDPガイドライン(※2)の施行により品質管理が厳格化し、温度逸脱が絶対に許されないような医薬品(コロナワクチンやインフルエンザワクチン)・スペシャリティ医薬品(新薬や原薬、臨床試験薬や治験薬、希少疾患治療薬、バイオ医薬品、再生医療等製品)向けや、半導体関連機材料(フォトレジスト、ソルダーレジスト、ペリクル、接着剤、銀ペースト)・機能性フィルム(異方性導電フィルム、電磁波シールドフィルム)向けの
高性能断熱ボックスシリーズ
もご用意しております。
- ※1:コールドチェーン(cold chain:低温流通体系)とは:生産者から消費者まで、生鮮食品や工業品、医薬品などを低温に保ったまま運ぶ物流方式。
- ※2:GDP(Good Distribution Practice)とは:医薬品の品質保証を目的にした指針。
特長2:作業性を重視したシンプル設計
断熱ボックスの使用環境は企業によってさまざまで、ベテランドライバーが扱うこともあれば、アルバイト初日の方が使用することもあります。そのため、誰もが直感的に使え、ミスが起こりにくい構造であることが理想です。
DNP多機能断熱ボックスは、実際の導入現場で寄せられた多くの声をもとに開発されており、一度の使用で操作方法を覚えられるシンプルな設計を実現しています。
以下では、大手流通小売業者様にご採用いただいている「DNP多機能断熱ボックス ばんじゅうサイズ」の構造的特長をご紹介します。
特長3:高精度温度シミュレーション
高精度温度シミュレーションで、実環境に即した検証を実現
当社が独自に開発した「高精度温度シミュレーション」は、仮想環境下で温度の変化を精密に予測できるシステムです。一般的な温度予測とは異なり、当社のシミュレーションは変数(要因)の設定数が非常に多く、外気温などの環境条件も分単位で細かく変更可能なため、非常に現実に近い再現性と信頼性を実現しています。
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特に、断熱ボックスの導入可否を検討する際、常温トラックでの使用を想定した温度変化の予測が求められることが多くあります。当社では、グループ会社の協力により4月~12月の常温トラック車内温度を実際に測定したデータを保有しており、これをもとに、より実運用に即した高精度なシミュレーションが可能です。
以下に、シミュレーションの基礎となる5月および11月に取得した常温トラック内の庫内温度データの一例をご紹介します。
特長4:豊富な採用実績に基づいた提案力
高精度な温度シミュレーションや、常温トラックにおける庫内温度データの分析など、私たちは、物流現場で求められる専門的な技術・豊富なデータ・現場目線の提案力を武器に、さまざまな課題を解決してきました。
例えば、「輸送中の温度管理が不安定」「品質維持のための対策が見つからない」といったお悩みに対して、具体的な数値とシミュレーションをもとにした最適なソリューションをご提案しています。
以下に、当社が実際に手がけた課題解決事例の一部をご紹介します。
<導入事例:冷蔵・冷凍食品メーカー様での断熱ボックス導入>
ある冷蔵・冷凍食品メーカー様では、冷蔵車を使用した配送のうち冷凍品輸送にドライアイスを併用されていましたが、ドライバーごとに使用量にばらつきがあり、特に夏場は過剰使用によるコスト増と品質の不安定さが課題となっていました。こうした背景から、当社は輸送環境や製品特性の詳細なヒアリングを行い、高精度の温度シミュレーションをもとに断熱ボックスをご提案。ドライアイスなしでも安定した温度管理が可能であることを温度データで示し、コスト比較の上で約半年での減価償却が見込める点も評価されました。夏季の実証試験により性能が実証され、同社では当社製品への全面切り替えを決定。これにより、ドライアイスの使用が不要となり大幅なコスト削減を実現したほか、保冷剤の規定運用により輸送品質も安定しました。当社の断熱ボックスは、食品物流の現場における品質確保とコスト最適化の両立を力強くサポートします。
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特長5:機能をプラスする包材提案
保管・輸送トラブルの原因は、熱だけではありません
保管や輸送の現場では、さまざまなトラブルが発生します。その原因は単一の要素による場合もありますが、複数の要因が複合的に絡み合っているケースも少なくありません。
当社が断熱ボックスのご提案で現場を訪問する中で、最も多く寄せられるのは「熱」に起因するトラブルですが、中には「熱」と「振動」の両方が影響しているなど、複雑な課題も見受けられます。
下図は、実際にお客様から伺った保管・輸送におけるトラブルの原因を整理・可視化したイラストです。現場の課題を理解する一助として、ぜひご覧ください。
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断熱から防錆・クリーン対応まで。物流課題を解決する多彩な機能性フィルムをご用意
当社では、真空断熱材に用いられる高機能なハイバリアフィルムをはじめ、物流現場の多様なニーズに応える機能性フィルムを多数ラインアップしております。
例えば、製品を錆から守る「
DNP防錆性フィルム
」や、異物混入を防ぐ「
クリーン二重層袋 UCPF
」など、輸送・保管時の品質維持に貢献するソリューションを豊富に取り揃えています。
断熱ボックスのご提案とあわせて、保管環境や輸送課題に応じた最適なフィルム製品もご提案可能です。「温度」「衛生」「安全性」といった複合的な課題に対し、DNPのフィルム技術が力強くサポートします。
製品の基本性能
DNP多機能断熱ボックス(ばんじゅうサイズ)の温度試験結果
夜間の長時間置き配運用を想定し、25℃環境下にて温度試験を行いました。
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利用シーン(用途)
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冷蔵・冷凍食品の「置き配」に、簡易冷蔵庫として活躍
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低温・定温輸送を支える、多用途対応の断熱ボックス
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冷蔵・冷凍品の混載輸送を可能にする、高性能断熱ボックス
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医薬品輸送に求められる確かな温度管理
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ご提案からご発注までの流れ
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お問合わせ
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ヒアリング
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温度シミュレーション結果の提示・ご提案
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サンプル貸し出し & 実証試験
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ご発注
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DNP多機能断熱ボックスに関するご質問のほか、温度シミュレーションのご依頼、サンプルの貸し出し、お見積のご相談も承っております。ご検討段階でも構いませんので、どうぞお気軽にお問合わせください。
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DNP多機能断熱ボックスの特長や採用事例をまとめた資料をご用意しました。庫内温度の実測データ(常温車)も複数掲載しており、物流現場での活用イメージや、温度管理に関する課題解決のヒントが満載です。ご興味をお持ちの方は、ぜひ資料をダウンロードください。