重点テーマ:人権・労働

人権・労働

基本的な考え方

DNPは、「人権の尊重」を企業が果たすべき基本的責任であるとともに、持続的な企業価値の向上に不可欠な基盤であると認識しています。「国際人権章典」や国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等、人権に関する規範を支持し、「社員」「地域社会」「サプライヤー」「顧客」「株主・投資家」といった多様なステークホルダーとの対話を通して、取り組みを強化しています。
そしてDNPは、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」という企業理念のもと、一人ひとりの「違い」を尊重し、互いに受け入れ、その多様性を活かすことで、より良い社会の実現を目指しています。加えて、職場の安全衛生の維持・向上や、社員とその家族の心身の健康保持・増進にも取り組み、健康で安全な活力ある職場づくりを推進することで、持続的な発展につなげていきます。

方針

DNPは「DNPグループ行動規範」のひとつに「人類の尊厳と多様性の尊重」を掲げ、あらゆる人が固有に持つ文化、国籍、信条、人種、民族、言語、宗教、性別、年齢や考え方の多様性を尊重することを定めています。2020年には、「国際人権章典」や「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」等の国際規範を尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて、取締役会の審議を経て、「DNPグループ人権方針」を策定しました。

DNPグループ人権方針

推進体制

DNPは、サステナビリティ推進委員会のもと、当委員会の事務局が中心となって本社関連部門と連携を取り、人権尊重のマネジメントを推進しています。当委員会は、人権等のサステナビリティの観点から中長期的なリスクを管理し、事業機会の把握や経営戦略への反映を担うとともに、取締役会に報告と提言を行います。

人権尊重のマネジメントを推進体制図です。サステナビリティ推進委員会は、委員長の代表取締役社長と、本社組織の担当役員とで構成されます。人権マネジメント関連部門には、人事労務部門、購買部門、コンプライアンス部門、事業推進部門、技術・研究開発部門等が含まれます。

サステナビリティ・マネジメント

戦略・リスク管理(人権デュー・ディリジェンス)

DNPは、「DNPグループ人権方針」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを強化しています。自社の事業活動が、社員だけでなく、サプライヤーや地域社会等、全てのステークホルダーの人権に影響を及ぼすことを認識し、それらの負の影響を防止・軽減するための各種施策を実行しています。また、人権デュー・ディリジェンスで求められる救済へのアクセスを確保するために、各ステークホルダーが利用できる通報窓口の実効性の強化や、ステークホルダーとの対話等を推進しています。

DNPは、DNPグループ行動規範の考えのもと、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会にて、人権デュー・ディリジェンスを進めています。2020年には、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠した「DNPグループ人権方針」を策定しました。人権方針に基づき、人権への負の影響について、特定・評価、防止・軽減、取り組みの実効性の評価、説明・情報開示を行うといった一連の人権デュー・ディリジェンスプロセスを継続的に実施しています。また、人権への負の影響を引き起こした際には、苦情処理メカニズムを通じた救済をするために、社内外のステークホルダーが利用できる通報窓口も設置しています。人権方針、人権デュー・ディリジェンスプロセス、苦情処理メカニズムを通じた救済のそれぞれが相互に影響し、さらにステークホルダーエンゲージメントを推進することで、人権デュー・ディリジェンス全体の取り組みを改善、強化しています。

負の影響の特定・評価

2025年、DNPは社外の有識者と連携し、自社及び国内外のグループ会社(一部を除く)を対象に人権への負の影響を評価しました。評価結果はサステナビリティ推進委員会に報告され、委員会内での審議を経て、DNPにとっての顕著な人権課題を改めて特定しました。今後は、社会動向や事業活動の変化、ステークホルダーとの対話、通報窓口からの情報などを踏まえ、特定した人権課題を継続的に見直していきます。

検討アプローチ

  • DNPが考慮すべき人権への負の影響の洗い出し・抽出
    • 国際機関やNGO等のレポートや提言を踏まえ、業界内で注意すべき負の影響の特徴を整理
    • 同業他社等の業界内における過去のトラブルや訴訟を踏まえ、顕在化しやすい負の影響とその内容を把握
    • 国内外の関係部門・拠点に対するヒアリングやアンケートを通じて、DNPの業務内容や特徴、現状のリスク認識や懸念などを把握
  • DNPの顕著な人権課題の特定

    抽出した負の影響に対して、深刻度と発生可能性の評価によって初期的な重要度を決定し、DNPとして優先して対処すべき顕著な人権課題を特定

    • 深刻度(規模、救済可能性、範囲)
    • 発生可能性(潜在的なリスク因子の有無・リスクの顕在化状況)

特定した顕著な人権課題

DNPは、特定した顕著な人権課題への対応として、職場環境の整備や労働安全衛生の推進、サプライヤーへのサステナブル調達ガイドラインに基づくマネジメント等の施策を実施しています。今後も、負の影響の防止・軽減をより徹底するため、施策の拡充・強化を図っていきます。

顕著な人権課題 取り組み
自社
  • ハラスメント
    - 社員間
    - 社員からビジネスパートナー*
    - 顧客から社員
  • 労働環境における安全・衛生
  • 長時間労働・過重労働

ハラスメント対策

労働安全衛生

健康経営

サプライチェーン
  • ビジネスパートナー*内、特に原材料の生産現場における強制労働・児童労働
  • 販売先の企業および工場内における強制労働・児童労働

サプライチェーンマネジメント

製品・サービス
  • 自社製品・サービスによる安全と健康への影響
  • 自社製品・サービスの利用による紛争・弾圧等への間接的加担
  • 生活者やその他の社外の個人情報流出によるプライバシー侵害

製品・サービスの安全性と品質

情報セキュリティ

*ビジネスパートナー:サプライヤー、業務委託先、構内外注、業務提携先、共同出資者など

救済措置

DNPは、ライツホルダーが問題を通報・相談しやすく、また会社としても権利侵害を把握・特定して是正・救済につなげるための苦情処理メカニズムを構築し、環境の整備を推進しています。社員やビジネスパートナー等の対象ステークホルダーごとに通報窓口を設置し、情報の機密性や通報者の匿名性を保護し、通報者が不利益を被らないように運用しています。

社員向けの窓口

職場環境やハラスメント行為等の相談・通報窓口を設置し、救済するための体制を構築しています。社員が所属する組織の担当者に随時相談できる体制も整備しています。

ステークホルダー向けの窓口

サプライヤーや業務委託先、退職した社員が、DNPの企業活動や社員の行動等に関するコンプライアンス上の課題を認識した際に通報できる窓口「コンプライアンス・ホットライン」を構築・運用しています。また、コーポレートサイトの「問い合わせフォーム」では、企業や団体、生活者の皆様も含めて、幅広いステークホルダーからの通報も受け付けています。通報者の保護・救済も重要な課題であり、DNPは、その課題解決に取り組むとともに公正かつ公平な企業活動を推進しています。

コンプライアンス・ホットライン(別ウィンドウで開く)

関連施策

教育と浸透

DNPは、事業活動を支える社員一人ひとりが人権尊重の重要性を理解し、日々の活動に反映することが欠かせないと考えています。そのため、約3万人のDNPグループ社員を対象に、人権への理解促進を目的として、2021年度から「ビジネスと人権」のeラーニングを実施しています。2024年度は、「DNPグループ人権方針」と国際基準に基づく人権課題等をテーマに、分かりやすさを重視したマンガ形式の研修を実施し、約21,600名の社員が受講しました。さらに、社外の有識者を招き、社員が人権尊重の行動をとれることを目的にしたプログラムも実施しています。そのほか、人権週間には社内サイネージやイントラネットを通じた意識の啓発や、社会貢献活動と連携した人権への取り組みも実施しています。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」や、特定の事業部門を対象とした鉱物調達に関する教育など、多種多様な研修プログラムを行っています。
社外のサプライヤーに対しては、「DNPグル―プサステナブル調達ガイドライン」に基づく各種の調査や面談、サプライヤー説明会などの機会を通じて、人権問題に取り組むことの重要性を伝え、連携しています。

ビジネスと人権のマンガ教材の1コマ

社外の有識者による「ビジネスと人権」の講演

社員の人権への取り組み

ハラスメント対策

健全な職場環境の維持を目的として、「セクシャルハラスメント防止規程」「パワーハラスメント防止規程」「マタニティハラスメント・ケアハラスメント防止規程」を制定し、防止および問題の早期発見ならびに適切な解決の為の必要な措置を定めています。
また、昇任時の管理職(マネージャー)研修において、全研修対象者に対してハラスメントへの適正な対応について教育を実施するのに加え、毎年1回、全管理職に対してハラスメント教育を継続的に実施しています。

適正な賃金の支払い

DNPは、各国の賃金関連法令で定められた最低賃金以上の賃金を支払うことを遵守し、物価等の社会動向を考慮した、生活賃金の支払いに配慮しています。また、すべての社員の賃金は、現在の役割と成果をベースとした期待役割や期待成果(=期待貢献)に応じた報酬体系となっており、「同一労働・同一賃金」の原則に則り、処遇制度上、年功や性別によって差を設けることはありません。こうした金銭的報酬に加えて、法令で定める福利厚生を提供するほか、社員の自律的なキャリア形成を支援する仕組みや働きがいと働きやすさの両面を向上させる施策、一人ひとりのウェルビーイングを高める取り組みなども積極的かつ継続的に展開しています。

平均年間給与

ダイバーシティ&インクルージョン

DNPは、多様な個を活かすダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。この取り組みを通じて差別やハラスメントの防止、心理的安全性の確保等、社員の人権の尊重につなげています。

ダイバーシティ&インクルージョン

労使関係

DNPグループは、労使の「相互理解と相互信頼」をベースに、経営の安定と永続的発展 、社員のこころ豊かな生活の実現を図るため、様々な課題について労使で協議・意見交換する体制(経営協議会、労使専門委員会等)を整えています。この他にも、働き方や職場環境、人事制度全般、安全衛生等について、幅広く労使協議を行っています。
このような充実した労使関係はDNPグループの強みでもあり、「オールDNP」の総合力の発揮に向け、今後もより一層進化させていきます。

2006年10月に、「目指すべき労使関係の姿」や「労使関係の原点」を全従業員で共有するために、「労使共同宣言」を発しました。「労使共同宣言」でうたう「労使協働」とは、会社と組合員以外の人たちも含む全従業員が「対話」を通じて「目指す方向」について共通認識を持ち、その実現に向けてそれぞれの役割を果たしていくということを意味しています。

労使共同宣言

前文

私たちは社会とDNPグループの永続的な発展を目指し、真に優れた会社として社会の中で果たすべき役割をさらに高めていくため、経営の基盤である「労使協働」の大切さを相互に確認し、次の通り宣言する。


宣言第一項

協働による21世紀社会への貢献

宣言第二項

永続的な発展と豊かさを求めて

宣言第三項

対話による企業風土づくり

連枝会(共済会)

会社と労働組合がそれぞれ資金を拠出して基金を設け、協働して各種共済事業運営にあたる独自の体制を構築しています。2024年度の慶事給付は10,489件でした。

企業市民としての取り組み

次世代育成

DNPは、「児童の権利に関する条約」(1989年の国連総会で採択)と「子どもの権利とビジネス原則」(2012年にユニセフ、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンが策定)を支持しています。児童労働の禁止はもちろん、「児童の権利に関する条約」が定める「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」という子どもの四つの権利を尊重します。「DNPグループ社会貢献活動方針」のひとつに「次世代育成」を掲げ、次世代を担う子どもたちの健全な育成を支援する活動に力を入れています。

地域社会

DNPは、地域社会の一員として、常に国内外のそれぞれの地域に寄り添うことを心掛けています。例えば、本社がある東京の市谷地区では、地域協働学校運営協議会に参加して学校運営を支援するほか、地区防災協議会等にも参加し、地域の安全・安心な環境づくりに留意しています。全国においても、各事業所内の緑地づくりや地域生態系の保全活動を進め、工事などで一時的に環境に影響を及ぼす場合があっても、地域住民の方々への説明や緊密な連携によって、深刻化を防いでいます。DNPは、ビジネスパートナーだけではなく、地域社会等のステークホルダーともコミュニケーションを深め、体制を整えながら適切に対応しています。

DNPグループ社会貢献活動方針・活動テーマ